あえて「国内産業の空洞化も悪くない」と考えてみる

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海外進出すればなんとかなるわけではないが

   実はこの分析だけでは、空洞化が悪くないとまで言い切れない。その理由は、府から外にはみ出して経済活動をしている企業を、ひとまとめにしているからである。

   もし広域展開企業を、海外展開をしている企業と、広域展開しているが国内のみの企業に分けてみたら、空洞化の是非についてより明確な議論ができただろうと今では思っている。

   こうした分析は、これだけ電力について熱い議論が続いているわけだから、今から誰かが手掛けてもよいはずである。

   もうひとつ注釈を加えておく必要がある。それは、海外進出した企業を平均化すれば、経済貢献度が極めて高くなるが、個別にみていくと必ずしもそうでないということだ。業績が低いままの企業も最近は増えている。

「コスト競争できないから、という理由だけで低コスト国に進出してくる企業は、進出後困難にぶち当たることが多い」

   これは、中国や東南アジアの日系企業の商工会や、日系銀行の支店長あたりからよく聞く話である。海外進出すればなんとかなる、という訳ではないということだ。

   日本の戦略を考えるうえで、どこまで積極的に製造業などの海外進出を支援していくのか。その見極めが、電力のピーク・デマンドを巡る現実的な解を探る上で大きな意味をもたらすのではないだろうか。

   原発廃止とピーク・デマンドの切り下げだけを取り上げて議論しても建設的ではない。海外進出による国内経済へのプラス効果も考慮した、日本の一体的な経済戦略の策定が今は大事なのだ。(大庫直樹)

大庫直樹(おおご・なおき)
1962年東京生まれ。東京大学理学部数学科卒。20年間にわたりマッキンゼーでコンサルティングに従事。東京、ストックホルム、ソウル・オフィスに所属。99年からはパートナーとして銀行からノンバンクまであらゆる業態の金融機関の経営改革に携わる。2005年GEに転じ、08年独立しルートエフを設立、代表取締役(現職)。09~11年大阪府特別参与、11年よりプライスウォーターハウスクーパース常務執行役員(現職)。著書に『あしたのための「銀行学」入門』 (PHPビジネス新書)、『あした ゆたかに なあれ―パパの休日の経済学』(世界文化社)など。
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