臨床心理士・尾崎健一の視点
経営上のねらいや必要性が明確になっているのか
会社がワークライフバランスに取り組む際、「プライベートも大切に」とか「社会活動に時間を使いましょう」といったスローガンを掲げるだけでは、抽象的で何を達成していいのか分からなくなりがちです。余裕のない中小企業では、現場の足を引っ張るように見えることもしばしばです。取り組むねらいを明確にし、具体的に何をやるかを決めて、経営者と従業員が同じ方向を向くことが必要です。
例えば、ねらいや必要性を「社員に精力的、創造的に働いてもらうために、心身を整えてもらう」とし、その時間や場所を確保する支援を行うことが考えられます。まずは労働時間の適正範囲に関する目標を定め、そのための時間管理を厳密に行うことが欠かせません。会社支援として、通勤時間を短くする借家補助やテレワークの推進、スポーツジムの法人会員になるといった方法もあります。こういった取組みは、充実した心身を作り出し、帰属意識を高めて仕事に注力してもらえる環境作りに役立ち、仕事の質や量の向上、ひいては生産性や売上向上が図れる可能性があります。