先日、仕事でご一緒させてもらった経営者の方が、なかなか興味深い話をしていたので簡単に紹介したい。氏は日本を含む数カ国に事務所を構えているが、原則として職歴のない新人は採用しないのだそうだ。
理由は簡単で、ゼロから育成するコストがもったいないから。ちなみに最近珍しく採用した新人は、日本語、英語、中国語を操る留学生だそうだ。
枠はあるのに内定を出さない企業が増えている
こてこての日系企業の新卒採用ばかり見ている筆者からすると、かなりハードルが高いなというのが実感で、この要求水準をクリアできる人材は多くはないだろう。ただ、やがて日本の大手企業も、こういう水準を要求するようになるはずだ。
従来の新卒一括採用が終身雇用制度の付随物だったということは、以前に書いた。そして、終身雇用が崩壊しつつある中、新卒バブルも崩れつつある。
実は現在、枠は余っているのに、内定を出さない企業が増えている。求人数100に対して、内定者が80人でも、スケジュール通り採用活動をクローズする企業が、特に大手には目につく(求人数を公開していない企業は、だいたいこのパターンと見ていい)。
90年代なら、なんとかして予定数を確保するのが採用担当者のミッションだったが、今は中途で取れるので、妥協してまで新卒にはこだわらないというスタンスなのだ。「脱新卒採用」「中途採用一本化」への緩やかな過渡期と言っていいだろう。
そうなると、もうポテンシャルがどうのとか、サークルの副部長がどうとかいう自己PRは通じない。学生も社会人同様、自己の専門性をどう活かせるか、きっちりPRしないとなかなか評価はされないはずだ。それを突き詰めれば、上記の経営者のようなスタンスとなるのだろう。