自治体なのにネット向けB級ネタを果敢に発信 「おしい!広島県」

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   広島県が人気タレント有吉弘行さんを観光大使に起用したウェブサイト「おしい!広島県」が話題になっている。広島の知られざる「おしい!」を紹介し、たくさんの人が実際に広島を訪れて「おいしい!」という感動に変わる日を目指している。

   サイト内の「広島県おしい!年鑑」には、「いいね!」ボタンならぬ「おしいね」ボタンが設置されており、フェイスブック上で情報がシェアされる。クリック数が一定数になると「おいしい!」認定マークに変わるしくみになっている。

お国自慢を、あえて「自虐」として見せる

スローガンは「おしいは、おいしいの一歩手前」
スローガンは「おしいは、おいしいの一歩手前」

   「年鑑」で紹介されているのは、全国屈指の観光資源であるはずなのに、残念ながらあまり知られていないものばかりだ。

   店舗数日本一なのに、わざわざ「広島風」と呼ばれる「お好み焼き」や、坂本龍馬ゆかりの港町なのに読み方が知られていない「鞆(とも)の浦」、日本三大銘醸地と称されるのに灘や伏見には知名度で及ばない「西条の酒」、全国一の生産量なのに知られていない「レモン」など、文字通り「おしい!」が並んでいる。

   通常の観光サイトでは、売りとなる観光地を「お国自慢」として紹介するものだが、このサイトではあえて「自虐」という形をとっているところがユニークである。とはいえ内容は、あくまでも観光情報をきちんと押さえている。見せ方をひねり、受け手に伝わりやすい工夫をしているだけだ。

   地方自治体や大企業のPRサイトは、訴求対象よりも「批判を受けたくない」という内部事情に目が向きやすい。周到な安全策がとられた結果、インパクトが減って想定する効果が上がらなかったということも少なくないだろう。

   しかし今回のような観光PRのねらいは「実際に広島県を訪れてもらうこと」であり、そのためには観光地に悪いイメージがつかない限り、まずは「知られること」「話題になること」「親近感を抱いてもらうこと」が何よりも優先されるはずである。

   その点、「おしい!広島県」は、笑われたりネタにされたりすることを恐れない(というより、ネット上でネタにされ話題になる手法をあえて取っている)ところが、他のPRにも学べそうなところだ。

市民がスローガンに反発する動画が再生38万回

県の記者会見を模した会場で乱闘する動画
県の記者会見を模した会場で乱闘する動画

   YouTubeには「おしい!広島県 THE MOVIE」という動画が掲載されており、公開1週間で再生が38万回を超えている。

   県の会見場で有吉さんが「おしい!広島県」というスローガンを発表すると、記者が「なんてこと言うんだ!」と激怒して詰め寄り、市民が反対運動を起こすシーンがあり、あらかじめ反発を織り込んでいることが想像できる。

   動画には、広島出身の歌手・西城秀樹さんや、香川県が打ち出す「うどん県」副知事の俳優・要潤さんのほか、昨秋の大阪市長選で敗れた平松邦夫・前市長も登場。「自虐」のコンセプトを貫いている。サイトで前面に出ている有吉さん自身も、広島県出身。自ら「一発屋芸人」と名乗るなど、自虐ネタで知られる。

   隠されたしかけとして、サイトのHTMLコードには有吉さんをかたちどったアスキーアートが施されており、このサイトに注目したウェブクリエイターの心理を読んだかのような工夫がなされている。

   ウェブで話題になり、ファンに愛されるために必要なPRとはなにか。企業や自治体の広報に対する姿勢についてあらためて考えさせられる事例ではないだろうか。(岡 徳之

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