「こんな世の中では夢を持てない」という若者への疑問

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運命の下で前向きに頑張って生きていく

   かつて農家の子供は農家に、職人の子供は職人に、という以外に選択肢はほとんどない時代があった。そういう状況から比べれば大きな進歩とは言えないだろうか。

   最後に、バブルに乗って派手な生活を送った一部の人をうらやんで、「やっぱりあの人より自分は不幸だ」という話をしてもナンセンスだ、ということを付け加えておこう。日本の高度経済成長は、世界史上稀に見る順調な時期だった。

   衣食住は足りているのに「なんで私には宝くじが当たらないの?」と下を向いて一生を送るのは、愚かなこととは言えないだろうか。それよりも、前の世代の頑張りで得た果実を、自分が生きているうちにエンジョイできる幸運を喜ぶべきだ。

   もちろん、気の毒なほど不遇な人も世の中にはいるが、それ以外の人でも日本人は必要以上に物事を悲観的に考える傾向にある。知的レベルが高く、まじめでネクラで、自分なんてまだまだと感じる人が多い。日本はこの国民性のおかげで向上心を持ち頑張って豊かになった面があるので、悪い面ばかりとは言い切れない。

   しかし、今の日本人ほど良い暮らしをしている人は人類史上ほとんどいないのが事実なのだから、不平を言って暮らすより、その立場をせいぜいうまく使って前向きに生きていくべきだと思う。現に、日本の食べ物は世界的に見ても本当においしいし、あんなハイテクなトイレで用を足している人は世界に一握りしかいない。

   自分の生まれ落ちた時代や境遇は変えられない。どうしようもないことに悩んでも無駄であり、与えられた運命の下で前向きに頑張って生きていく――。われわれはこういう心構えでいるしかない。宝くじに当たった人が、その後も幸せな一生を過ごせるとも限らない。(小田切尚登)

小田切尚登
経済アナリスト。明治大学グローバル研究大学院兼任講師。バンク・オブ・アメリカ、BNPパリバ等の外資系金融機関で株式アナリスト、投資銀行部門などを歴任した。近著に『欧米沈没』(マイナビ新書)
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