「電力」についてのクールな分析 日本経済をどうするのか

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製造拠点の海外流出加速を許容するのか

   再生可能エネルギーによる発電に、原子力発電すべてを明日から切り替えることができないのは明らかなことである。原発全廃は、どうしたって中長期的な議論にしかならない。

   そうなると、日本にある原発50余りのうちどれくらいを動かし、どれくらいを動かさないか検討する必要が出てくる。決め方によっては、ピーク日時の供給量が今よりも大幅に少なくなるかもしれない。

   製鉄所やガス会社などが持っている発電所の容量は、全体に比べるとそれほど大きくない。日本に散在している小規模発電機の出力合計が大きくなったとしても、どこまで送電をマネージできるか、できるのかもしれないが、できないかもしれない。

   つまり、ピーク・デマンドを下げるようにマネージしていくしかない。需要をコントロールしやすいのは、法人需要ということになる。去年と同じように、また法人にお願いしていくことになる。電力の使い勝手が悪くなると、製造拠点をはじめとして、いくつかの事業所は海外への移転を検討するようになる。

   今年、来年、再来年とどうしていくか。結局のところ、原発問題は日本の経済戦略をどうするかにも大きな影響を与える。思いきった原発運転の削減で製造拠点の海外への流出を加速させることも許容するのか、原発運転と製造拠点の維持のバランスさせる道を探すソフトランディングなのか、包括的な議論をしていかなければいけない。

   日本の戦略をどうするかという視点が必要である。(大庫直樹)

大庫直樹(おおご・なおき)
1962年東京生まれ。東京大学理学部数学科卒。20年間にわたりマッキンゼーでコンサルティングに従事。東京、ストックホルム、ソウル・オフィスに所属。99年からはパートナーとして銀行からノンバンクまであらゆる業態の金融機関の経営改革に携わる。2005年GEに転じ、08年独立しルートエフを設立、代表取締役(現職)。09~11年大阪府特別参与、11年よりプライスウォーターハウスクーパース常務執行役員(現職)。著書に『あしたのための「銀行学」入門』 (PHPビジネス新書)、『あした ゆたかに なあれ―パパの休日の経済学』(世界文化社)など。
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