苦しいときこそ、勇気づける大切さ
このマナハウスは2005年2月に閉店し、その後、高松さんは銀座でひとりバーを開いていた。僕はそのバーにも仕事に行き詰まるとひとりで訪れ、3時間、4時間と長居をした。
カウンターを挟んで1対1。僕が会社を辞めてこれからどうしようと不安にかられていた時期も、成功していったいろいろな有名人――きっとマナハウスの賄いを食べにきていたのだろう――の不遇時代の話を聞かせてくれて、勇気づけてくれた。
そんな関係を続けていく中、高松さんは長い旅に出てしまった。もう二度と会えない人になってしまったけれど、苦しい時代もいろいろと面倒をみてくださった。僕にとって、今でも大切な恩人のひとりである。
彼から習った最大のことは、クライアントの中で苦しい境遇にある人とも、それまでと同じようにお付き合いをしていくことが大切だということ。会社の処遇は、運で大きく左右されることがあるからだ。
「人と人とのつながりは、会社の処遇で左右されてはいけない。みんな頑張っているのだから」
そんな高松さんの声が、耳にいつまでも響いている。(大庫直樹)