学生のころはあんなに嫌だった勉強も、社会人になると「もっとしておけばよかった」と思う人が多いのではないか。よりよい仕事をするには知識や考え方が大切だと気づいても、あらためて学校に通うのは、時間的、金銭的な制約があってなかなか難しい。
ネット上を検索してみると、無料の勉強会やセミナーがけっこう開かれていることがわかった。ちょうど「企画」に興味があったので、候補の中から「schoo WEB-campus(スクー ウェブキャンパス)」が主催する「おもしろいプロジェクトとは何か」という講座を受けてみた。
講師は、小澤総合研究所所長で、楽天顧問の小澤隆生さん。ちょんまげ姿のアイコンで、ネットでは知られた人だ。今年の節分には、東京タワーで「すごい豆まき2012」を企画運営し、600人を集めて話題になっていた。
豆の量を1トンに増やしてみた「すごい豆まき」
「すごい豆まき2012」は、東北の農家から食用に適さない「クズ豆」1トンを買い付け、鬼に投げつけるというイベント。参加者は、鬼役として登場した有名IT企業社長や女子大生、プロ野球OBに容赦なく豆を投げつける。社長に向かって思い切りモノを投げるなんて機会、なかなかない。
最後は、お互いに豆の投げつけ合いに。1人あたりの豆の量は、2キロ近くにもなる。豆のゴミは回収し、堆肥の原料とする。豆で目を傷つけないように、メガネメーカーから目を守るゴーグルなどを提供してもらった。
バカバカしくて意味がないようで、「被災地復興支援」というねらいをさりげなく混ぜ込んでいる。鬼のコスプレで参加した人には、100軒以上の協力飲食店で「オニワリ」という割引が受けられるので、地元の商店街振興まで含んでいるのだ。
講義では、実際に「おもしろいイベント」を発想する手順を中心に話が進められた。まずは普通の企画をいちど組み立ててみて、その「構成要素」を変えていくことで、おもしろさを加えていくやり方がよいのだそうだ。
小澤さんによると、「すごい豆まき」のヒントになったのは、スペインの「トマト祭り」。熟したトマトを大量に投げつけ合う伝統行事だが、同じ食べ物を投げる日本の「豆まき」も、「豆の量」という構成要素を「1トン」に変えることで、世界的なおもしろイベントにすることができるのではと考えたという。
社会人の「学べる場所」へのニーズはとても高い
企画力は、どんな仕事にも求められることだが、特に筆者のようなフリーランスには欠かすことができない。そんな大事なノウハウを、小澤さんのような専門家から具体的な事例に沿って話を聴ける機会は、とても貴重だ。
この日の講座には、現地(東京・西麻布)のイベントスペースで筆者を含め25名ほどが直接講義を聴き、ウェブ経由で約800人が参加していた。
運営会社スクーが掲げるミッションは、「社会人が、学び続けるためのお手伝い」。2011年12月にサービスが始まって3か月ほどだが、すでに会員数は1万6000人を突破しているというから、この手のニーズがすごく高いことがわかる。
講義は毎週木曜日に開催される。開始時間は午後8時半。週に1回くらいは仕事の都合をつけて何とか受講できる、という人も少なくないのではないか。
動画アーカイブがないのは残念だが、生でしか見られないという緊張感も悪くない。受講者の質問タイムがあったり、ツイッターの感想がウェブ画面に流れたりして、まるで同じ教室で大勢がザワザワ話をしながら講義を受けているような雰囲気だ。
今後予定されている講義のテーマも、社会人向けが多い。仕事に行き詰まり、ちょっと新鮮な空気が吸いたくなったとき、自宅にいながらにして無料で受けられる有名人の生講義を聞いて、ヒントを探してみるのもいいと感じた。(池田園子)