「省庁から国家へ」官僚の目線を引き上げろ
そして、上記のような改革にはもう一つ、とてもとても重要な意味がある。それは、彼ら官僚の目線を、省庁から国家へと上げさせることだ。
従来、政治が様々な改革をしようと試みるたびに、省庁間の縄張り争いが原因でとん挫してきた。たとえば、正社員と非正規雇用の格差に対して、厚労省は規制緩和ではなく正社員化を試みようとしている。
彼らにしてみれば、規制強化で失業者が増えることよりも、労働者が流動化して社会保険料が天引きできなくなることの方が恐ろしいのだ(厚生年金制度の加入者が減る→保険料ではなく税方式に移行する→財務省管轄となってしまうため)。
こうした縄張り争いの根っこにあるのは、ポストでしか報われない歪んだ報酬システムの結果、個人のインセンティブが組織の拡大方針と密接に結びついてしまっているせいだ。この部分のスイッチを切りかえられれば、彼らは縄張り争いをやめ、強力な改革の担い手となりうるだろう。
仕分け会議のようなものは、効果ゼロではないけれども、終わりのないモグラ叩きのようなものだ。一方で人事制度自体の改革は、官僚自身も特に反対する理由はない(上級役職者が渋れば、経過措置として移行期間を設ければいい)。必要なのは、政治のイニシアチブだけである。(城 繁幸)