現役のキャリア官僚が、自身の給与明細を公表してちょっとした話題となっている。あえていうが、先進国の中央官僚の給料としては、驚くほど安い。身分保障がある分、リスクのある年俸制ホワイトカラーや経営者より安いのは仕方ないが、筆者がサラリーマンをやっていた頃よりも一段安い水準だ。
以前も書いたように、天下り問題の本質は「まともな報酬制度が欠落していること」にある。天下らなくとも組織内で完結する報酬制度を導入し、天下り先を転々と渡らなければペイしないほど低い給与水準を大幅に引き上げることなしに、天下りの根絶などは夢のまた夢だろう。
優秀な人材を中途採用でき、天下りもなくせる
もちろん、現在の賃金制度を維持したまま、強引に天下りだけを根絶することも(圧倒的な国民の支持をバックにした政権なら)可能ではある。でも、それは官僚の実質的な生涯賃金大幅カットにほかならず、官僚機構に深刻な機能不全をもたらすことになる。
実は筆者は、すでにその兆候は霞が関にあらわれていると考えている。徐々に天下り先が削減される中、次官をはじめとする上級官僚は目詰まりし、霞が関全体の人事は停滞している。2000年代に入り、東大法学部から霞が関に進む人間が半分以下に激減したのは、進路の多様化だけが理由ではないだろう。
ダメな制度にしがみついたダメ企業なら潰れてもらって構わないが、国家の屋台骨が揺らいでしまっては一大事だ。
では、必要な報酬制度とは何か。筆者なら、初任給一千万円の完全年俸制にした上で、残業手当を含めた諸手当も退職金も廃止する。そしてポストごとに基本給を設定し、成果分は一時金で大きく差をつけて支給する。
加えて、従来のように年功序列的なローテーションは全廃し、年齢にかかわらず優秀者だけを昇格させる。昇格しない人間は何年勤めても一円も昇給しないし、仕事のなくなった人間は契約更新なしでクビにする。実にシンプルな人事制度だ。
これなら民間大手とも給与水準でそん色ないし、逆に中途採用で優秀な人材をどんどん採用できるだろう。もう天下る必要もなくなるから、仕分けの後でコソッとわけのわからない独法を復活させたりなんてこともなくなるはずだ。
先日、国家公務員の7.8%賃金引き下げ法案が成立したが、一律の賃下げでは全体のモチベーションが下がるだけだ。本来の効率化というのは、下げるべき人は下げ、仕事のない人間は解雇し、上げるべき人は賃上げするものだ。