誘導質問の前に「本音の糸口」を探すこと
具体的なヒアリングのやり方を考える際には、前回取り上げた「カットイン(切り込み)」との関係が重要になります。飛び込みでいきなり商品セールスを始める営業は論外としても、信頼感や親近感を抱く間もなく、いきなりヒアリングに入る営業マンが私のところにもよく来ます。そんな相手には面食らいますし、
「見ず知らずのあんたに、なんでこっちの考えをあれこれ話さなくちゃいけないの?」
という疑問が頭をもたげてきます。そうなると「図々しい奴だ」と腹立たしくもなり、「悪いね、今忙しいから」と追い返すことになるのです。
ヒアリングを円滑にすすめる「準備段階」としてのカットインの方法は、前回の記事を参照いただくとして、ヒアリングは相手との距離を縮めてからスタートすべし、とあらためて認識してください。
ヒアリングにおける質問の仕方は、場面ごとにやり方が異なります。クロージング近くで一定の結論に導きたい場合には、「××は嫌ですよね?」「○○だと思いませんか?」といった「はい」か「いいえ」で答えてもらう「誘導質問」が効果的です。
ところが、相手のニーズが盛り上がっていない段階でこれをやると、相手に警戒感を与え、「そうはいくもんか」と見えない抵抗を受けることになってうまくいきません。
導入段階でいくらか親近感をもっていたとしても、誘導質問を繰り返していてはお互いのキャッチボールが進みません。ヒアリングの初期段階では、極力「はい」や「いいえ」で答えられない質問をぶつけ、相手の懐に入り込み、本音の糸口を探すことが大切です。
次回は「クレーム対応」を契機とするヒアリングについて検討します。(大関暁夫)