いま、勢いがある業界といえば、グリーやモバゲーといった「ソーシャルゲーム業界」がそのひとつにあげられるだろう。市場規模は数千億円と言われ、各社は高給を掲げて人材の獲得競争に躍起である。
そんなソーシャルゲームを、企業のマーケティングに使っている例がある。無印良品の「MUJI LIFE」は、ウェブとスマホアプリでファンの心をつかみ、ブランドロイヤリティを高める取り組みを行っている。
商品の陳列棚で「自分らしさ」を表現する
ソーシャルゲーム「MUJI LIFE」は、サイト上の棚に「無印良品」のお気に入り商品を並べる遊びだ。フェイスブックやツイッターなどSNSのアカウントで登録すると、1日6回、アプリ上に「段ボール箱」が届く。
箱を開け、無印良品アイテムを模したデジタルフィギュアが当たると、利用者はそれを「自分の棚」に好きなようにレイアウトできる。ただそれだけのことなのだが、これが意外にはまるのだ。
棚の陳列状態は、SNSでつながる友人たちとシェアできる。そこには、その人がどんな商品が好きで、どんなレイアウトのセンスがあるのかが表れる。勝ち負けではなく、「自分らしさ」を表現するゲームと言っていいだろう。
段ボール箱には、通販サイト・アマゾンの商品を並べられるチケットが入っていることもあり、チケットを使って本や音楽、映画なども陳列できる。「こんな部屋があればいいな」「こんなお店だったら通いたい」という理想が、バーチャルで実現できる。
もちろん、ユーザーが遊べるだけでなく、店側にもメリットはある。棚に並べるアイテムを取捨選択する際に、利用者は自然と「品定め」することになるので、押し付け感のないプロモーションが可能になる。
また、ユーザー同士で棚をシェアする輪が広がれば、お互いに商品をレコメンド(おすすめ)しあうことになるので、これも販促につながるだろう。
iPhoneアプリで「限定アイテム」も入手できる
段ボール箱には、「棚の丸ごとプレゼント」や「季節のプレゼント」に応募できる仮想通貨「MUJI COIN」が入っていることもある。MUJI COINは、サイトへの訪問や、商品のレビュー投稿でも入手できるので、参加者のモチベーションもあがるだろう。
「MUJI LIFE」は、iPhone向けに「MUJI LIFEチェックイン」というアプリも展開している。利用者は無印良品の店舗に行き、アプリを立ち上げてチェックインすると、限定のデジタルフィギュアが入手できる。
これにより、店舗としては「行きつけのファン」を呼び寄せることができる。チェックインは世界20か国、167店舗で可能だ。
もちろん、iPhoneアプリからも段ボール箱を開いたり、「MUJI COIN」を集めたりすることができる。さらに、「行きつけのファン」が店の雰囲気を味わえるように、無印良品の店舗でかかるBGMを聞くこともできる。
ユーザーが楽しみながら、自然とブランドのファンになり、店舗からの販促情報をストレスなく楽しみながら受け取れるしくみというのは、他の業界や商品にも応用できるのではないだろうか。(岡 徳之)