独立行政法人の労働政策研究・研修機構のウェブサイトが、ドイツ経済技術省の興味深い調査を紹介している。2009年に新設された約40万社の企業のうち、約13万社は「移民」の起業によるもので、全体の32.5%を占めたという。
5年前と比べて、移民の起業は約25%増加しており、特に増えているのはポーランド人の起業。移民の伝統的な起業分野である飲食業や小売のほか、建設分野や知的産業などへと業種を広げている。
起業規模大きく「ドイツ経済に重要な貢献」
この結果について、ドイツ経済技術相は「わが国の経済成長にとって非常に良いこと」と歓迎の意思を表明している。「革新的な製品やサービスを生み出し、経営者として独立する意欲を持つ独創的な頭脳の持ち主」であれば、国籍は特に問わないようだ。
ドイツ経済技術省が推進中の起業支援策は、移民も対象にしており、その効果が現れたという見方もある。
ドイツ労働市場・職業研究所の分析でも、移民による起業の新規性・改革性はドイツ人との間に大きな差は見当たらず、むしろ起業規模がより大きいので「移民による雇用の方が大きな雇用効果がある」「ドイツ経済に重要な貢献をしている」と結論づけている。
移民の起業率が高い理由としては、もともと起業意欲の高い国からの移民であることや、移民はドイツ人よりも失業リスクが高いため、自分自身で起業する動機を強めているという側面もあるようだ。
ドイツの移民といえば、2010年10月にメルケル首相が「(ドイツの)多文化主義社会は失敗した」と発言して話題となり、ドイツ人労働者にとって移民は敵だという意見もあった。しかし2005年3月に12.1%だった失業率は、6年間で5ポイント改善しており、移民の起業が国内経済の活性化に貢献している側面もあるようだ。