仕事やプライベートでタクシーを利用するとき、タクシー会社にこだわる人はどのくらいいるだろうか。店に配車を頼んだり、往来やタクシー乗り場でたまたま当たったタクシーに乗るなど、なんとなく選んでいる人がほとんどではないか。
特定のブランドにこだわりを持たない顧客に、いかにして自社を選んでもらうか。タクシー大手の日本交通が目をつけたのは、利用者が急増するスマートフォンのアプリで配車予約をしてもらうことだ。
待ち合わせ時間、場所、車種などを簡単に指定
スマホアプリの「日本交通タクシー配車」(iPhone/Android)は、直感的な操作とGPS機能で、日本交通グループと関連会社のタクシー約3700台の中から、ユーザーの現在地周辺を走行中の車両を呼ぶことができる。
2011年1月のリリースから約10か月で、11万件のダウンロードを達成。東京23区を中心とする配車にもかかわらず、配車台数は3万5000台、タクシー売り上げは1億円を突破した。現在では多摩・埼玉・神奈川の一部地域までエリアを拡大している。
アプリを立ち上げると、現在地が指定されたGoogleマップが表示されるので、地図を指で動かして、タクシーを呼びたい地点を設定する。
次に、希望するタクシー会社と配車時刻(1~24時間後)、目的地、「黒タク」や「プリウス」 の車両タイプと台数を指定する。指定した場所での待ち合わせか、乗務員に自宅まで迎えに来てもらうかの選択も可能だ。
日本交通はこのアプリによって、「通話がつながりにくい」「細かい説明が面倒」「電話をかけることで通話料が必要」といった従来の問題をクリアできるという。実際、ネット上には、「(雨の日に)タクシー会社にまったく電話が通じなくて困り果てた時に試しに使ってみた」という声もあった。
全国版のアプリも登場。北海道や近畿でも使える
このアプリは事前のユーザー登録が不要で、運転手に目的地を口頭であらためて説明する必要がない(日本交通のみ)。わずらわしさがなくなるだけでなく、これまでタクシーの予約をしにくかった言葉の不自由な人にとって非常に有用だろう。
また、Googleマップ上で2つの地点を操作するだけで、概算の料金と距離を調べることができる。お気に入りのルートを保存することもできるので、タクシーをよく利用するユーザーには便利だ。
このアプリの成功を受けて、日本交通と日本マイクロソフトとの協業により、北海道、大阪府などの近畿圏、福岡市など13都道府県に配車エリアを拡大した「全国タクシー配車」を2011年12月に公開したところ、2か月で15万ダウンロードを達成したという。
機能面でも「いますぐ呼ぶ」を選ぶと近隣に走行中のタクシーが見つかった場合におよその到着時間を知らせてくれたり、提携タクシー会社の電話番号を検索できたり、24時間以上先の日時を指定できるなど、さらに使い勝手が向上している。
(岡 徳之)