たかがゲーム内アイテムに、どうして何万円も払うのか

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   ソーシャルゲーム内で使えるレアアイテムのデータを勝手に複製しまくり、オークションで販売して3000万円を荒稼ぎ。先日、報道されたニュースをご存知の方も多いと思います。

   それにしても、いくらなんでもゲーム内でしか使えない単なるデータに、数万~十数万円も払って買うなんて、どういうことなんだろう――。ソーシャルゲームにこれっぽっちの興味もない筆者は不思議に思っていましたが、案外近くに該当する人のことを知っている友人がいました。

強い敵キャラが「大人買い」促すのか

「それこそ、今回の報道でわかったんだけど、ウチの甥っ子がまさにこのゲームにハマってたらしいのよねぇ」

   普段は離れて暮らしているため、甥っ子の日常などノーケアだったA子さん。たまたま姉と電話することがあり、報道もあってゲームのことに話が及んだのだとか。

「甥っ子がオークションで売り買いをしていたのかどうかはわからないんだけど、スマホのゲームでアルバイト代のほとんどを使っちゃってるんだって」

   どうすれば、タダでできるゲームに何万円ものお金を使えるのでしょう? A子さんも同様に思っていたらしく、どんなものなのかと登録をしてみたそうです。そこで、A子さんのスマートフォンでゲームを見せてもらいました。

   ゲームの出来自体は、昔からPCやMac向けにあった無料ゲームそのもの(Flashやスクリプトを利用したゲーム)。特に複雑なストーリーがあるわけでもなし、戦闘シーンにも高度な動きがあるわけではありません。

   攻撃と防御のプロセスがブラックボックスになっているところなど、まさにかつてダウンロードサイトで無料配布されていたゲームを彷彿とさせます。ただ、出てくる敵のキャラクターがやたらと強い。これを倒さないと次へ進めないとなると、お金を払ってでもアイテムを買いたくなるということですか。

「調べたら、普通にゲーム内で活動することで貰えるアイテムのほかに、ショップみたいなのがあって、そこで売ってたり、くじ引き形式で強いアイテムが当たったりするらしいのね。そこでお金を使っちゃうみたいなの」

   ガチャガチャでレアアイテムが出るまでやる、卵形チョコレート菓子でレアアイテムが出るのを待つのが面倒なので一気に大人買いしたおす、そんな現象と同じことが起きているんですね…。

射幸心を煽りすぎると、規制を求める声が大きくなる

   検索してみたら、くじ引き形式で強いアイテムが当たるイベントは、その名も「ガチャ」でした。しかも、必ず強いレアアイテムが当たるとは限らないようです。

   さて、今回はレアアイテムのデータを盗み見ることができ、それに気づいた者がデータを勝手に複製して販売し、大儲けをしていました。

   PCやMac向けの無料ゲームでは、これも昔からデータを盗み見てゲームを容易に進行させる「チート」が幅を利かせており、チートの方法を売っている者がいたことを思い出します。そもそも、登録と初期のプレイは無料ということからも、まあ、昔ながらのPCやMac向け無料ゲームと、内容もビジュアルも同等のクオリティということなのでしょう。

   それが面白いかどうか、時間潰しになるかどうかは本人次第。ハマっているゲームを止めさせるというのは、ゲーム以上に面白いことがあると本人が気づかないと無理なような気がします。

「やっぱり、そういうことなのかしら…。変な事件を起こすよりはマシじゃない、なんて姉には言っておいたんだけど」

   単純なゲームを飽きさせないために射幸心を煽るというのは、よくあるやり方ではあります。ただ、煽り過ぎるとプレイヤーがパンクして離れていったり、規制を求める声が大きくなるのは、これもまた世の常。

   今後は、ソーシャルゲームの運営にも慎重な舵取りが要求されてきそうです。筆者自身はまったく興味がないので、どっちでもいいんですけどね。

井上トシユキ

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井上トシユキ
1964年、京都市出身。同志社大学文学部卒業(1989)。会社員を経て、1998年よりジャーナリスト、ライター。東海テレビ「ぴーかんテレビ」金曜日コメンテーター。著書は「カネと野望のインターネット10年史 IT革命の裏を紐解く」(扶桑社新書)、「2ちゃんねる宣言 挑発するメディア」(文藝春秋)など。
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