臨床心理士・尾崎健一の視点
問題の根本は「残業の多さ」である
今回のケースはパワハラ以外に、セクハラ(性的な言動による就業環境の阻害)にあたる可能性もあります。どの程度の発言までが許されるか、上司と部下の関係によって変わるので一概には言えませんが、B部長はAさんとの距離を見誤ったといえるのかもしれません。性的発言と疑われるものは控えるべきとB部長に伝えましょう。
この発言だけでB部長を処分することは困難ですが、マネジメント上の問題はあると思われます。問題の根本は、Aさんが長時間労働を余儀なくされていることにあります。B部長は単に口頭で帰宅を促したり感情的になだめたりするだけでなく、残業の削減に注力すべきです。業務の絞込みや人手の補充によってAさんの負担を実質的に軽くしたり、職場の慣習として早く退社しない傾向にある場合には「ノー残業デー」や「退社時間の下限設定」などをして、職場全体として強制的に退社させる取り組みも必要です。
(本コラムについて)
臨床心理士の尾崎健一と、社会保険労務士の野崎大輔が、企業の人事部門の方々からよく受ける相談内容について、専門的見地を踏まえて回答を検討します。なお、毎回の相談事例は、特定の相談そのままの内容ではありませんので、ご了承ください。