社会保険労務士・野崎大輔の視点
ハラスメントは「受け手の問題」ではあるが…
行為者が意図するかどうかにかかわりなく、その言動が相手方に不快と受け止められ、仕事をする環境が損なわれる場合には、ハラスメントになる可能性があります。今年1月、厚生労働省のワーキンググループが「職場のいじめ・嫌がらせ問題」に関する報告を発表しましたが、この中の「パワハラの行為類型」に当てはめれば、今回のケースは「私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)」に該当するおそれがあります。
とはいえ、部長の言動には職権を濫用して部下に嫌がらせをする意図がなく、むしろ逆であることが明らかです。Aさんの受け取り方も疲労のせいか、やや過敏なところがあるかもしれません。会社としては、部長をパワハラで処分する必要はないと思われますが、後に別のトラブルに発展するおそれもあるので「何もなかったことにする」のではなく、双方から言い分をきちんと聞いて双方のコミュニケーションのずれを調整し、記録に残しておいた方がよいでしょう。