2011年のある日、狭い機内のシートの中で、僕は身体を丸めて小さな画面に見入っていった。映画「マネーボール」。原作が上梓されたのは、2003年のことだ。僕は書店に平積みされた本を買い、瞬く間に読了してしまった。
それが8年の月日を経て、映画化された。映画になるのが遅れたのは、原作がノン・フィンクションであり、経営書であったためだろうか。
データを基に「出塁率」の高い選手を評価
映画では少し分かりにくくなってしまっているが、この書は、ベースボールの本質を捉えなおすことが成功の道であったことが強調されている。ブラッド・ピット主演のこの映画には、コンサルティングの本質が隠されているのだ。
僕らは野球選手を評価するときに、打率やホームラン数などを指標にする。しかし「マネーボール」では、そう考えない。
「ベースボールとは、27個のアウトを取られるまでは終わらないスポーツである」
と捉えなおす。だから、打率やホームラン数よりも、出塁率が大切だ。出塁する限りにおいて、ヒットもフォアボールも等値であるとみなすことになる。
選手の年棒は、打率やホームラン数を重視して決まることが一般的だ。打率が低くホームランも少ない選手の年棒は低くなるので、年棒は低くても高い出塁率でチームの勝利に貢献できる選手が存在することになる。
そうした事実関係を統計から気づき、ロー・コストでハイ・パフォーミングな選手を獲得して、オークランド・アスレチックスという弱小チームを立て直していった実話に基づく物語である。
実は、コンサルティングも同じ原理だ。どうしてクライアントの本業に外部のコンサルタントがアドバイスできるのかというと、クライアントは往々にして永年の経験に頼った思い込みがあるからだ。