いまどきの就活生がもっとも頭を悩ませるのは、書類選考用に提出する「エントリーシート」の作成だそうだ。できが悪ければ二次選考に進めないので、当然気合いが入るが、何十社分も作成しているうちに混乱してしまい、ありきたりのことを適当に書いてしまいがちだという。
学生の疲れも理解できるが、似たようなエントリーシートを大量に読まされる採用担当者はたまったものではない。そこで企業側も学生の特長を的確につかみ、自社が求める人材を効率的に発見できる「オリジナルの設問」を盛り込むべく知恵を絞っている。今年はどんな「お題」が出されたのだろうか。
NTT東日本「この会社でどんな未来を作りたいか」
就活生向け情報サイト「就活の栞」では、主要企業のエントリーシートに関する情報を毎年収集している。今年はすでに20社以上が集まった。目につくのは「あなたのアピール」に関する設問の工夫だ。
「あなたが描く2020年の夢は何ですか? あなたが2020年に実現したいことは何ですか?」(ファーストリテイリング)
「日常生活の中で、あなたが一番『自分らしい』と感じる瞬間をお書きください。200字」(ソニー)
「あなたの好きなこと・ものについて、相手が関心をもつように自由にアピールしてください。全角800文字以内」(ヤクルト)
単純に「自己アピールをご自由にどうぞ」ではなく、「相手が関心を持つように」と断り書きがされているところに、高いハードルが感じられる。少しでもひとりよがりな書き方があった時点でふるい落とされるのだろう。
自社の事業の「ビジョン」や「戦略」を尋ねる会社もある。経営コンサルタントに依頼するような内容だ。真剣な若者のアイデアが大量に、それも無料で集まるのだから、こんなにお得な機会はない、と見るのは意地悪すぎか。
「NTT東日本でどんな未来をつくりたいですか。300字」(NTT東日本)
「情報革命で人々を幸せにするために、ソフトバンクであなたが挑戦したいことは何ですか。400文字以上」(ソフトバンク)
「グリコの商品が売られていない国の人(グリコの商品を知らない人)にグリコの商品を1つだけ紹介することになりました。どの商品を紹介しますか?その理由。全角100文字以内」(江崎グリコ)
「未来の資産である子供たちに対して当社は何をしていくべきなのか、あなたの提案を教えて下さい。300字」(カルピス)
「鳩山由紀夫に、どんな本をすすめるか」
ある通信事業者は、「あなたの手元に1億円の事業資金があります。これを用いてどのようなことを実現したいですか?」という質問を設けている。「○○円あったら」という問いは、ここ数年、複数の企業で使われているようだ。
金額は「300万円」「3000万円」など企業によって異なる。企業側にも採用マニュアルが出回っているのだろうか。「何に使う?」と聞かれて、とっさに「都心にマンションを買って、少し親にあげて、残りは貯金します」と答えた場合、「事業資金」ならこれではアウトだ。
ネット上には、過去に出された「奇問」についての書き込みが見られるが、中には凝りすぎて「本当にこれで有用な人材が見抜けるのか?」と首を傾げたくなるものもある。
「あなたを四文字熟語で表現してください」
「新しい祝日を作ってください」
「お酒は人生に必要だと思いますか?」
「誰かひとり、歴史上の偉人にあだ名をつけてください」
「自分を動物に例えなさい」
「カラオケの持ち歌を教えてください」
「今あなたが就職活動について考えていることをオリジナルの川柳にしてください」
「1から9までの数字のうち、あなたが好きな数字を選びなさい。またその理由を400字以内で述べなさい」
「つるの恩返しでお爺さんとお婆さんに姿を見られない方法を三つ考えてください」
「十二支に1つ加えて『十三支』とすることになった場合、あなたなら何を推薦しますか?理由も教えてください」
ある出版社では昨年、「鳩山由紀夫、石川遼、東野圭吾にそれぞれ薦める本は何ですか。1行で理由を書いてください」という質問が出たそうだ。ちょっと面食らうが、確かにこれは本をたくさん読んでいなければ答えられない良問ともいえる。