当事者いわく「悪いのは自分ではなく時代」
なぜこのような社員が増えているのか。吉田氏は彼らが
「過去に例を見ないほど不運な世代」
として自信を失い、強い諦め感を抱いているおそれを指摘している。
確かにこの世代は、大きな社会の変化の波に翻弄されてきた。小学校を卒業するころにバブルが崩壊。「すぐに回復する」という楽観的な雰囲気のままトレンディドラマ花盛りを迎えたが、いつのまにか未知の深刻さが押し寄せていた。
父親がリストラで失業し、専業主婦の母親がパートに出るなど、比較的裕福だった家庭環境も一変した。2000年には求人倍率が1倍を割り、大学を無事に卒業した人でも、就職氷河期で厳しく選別される悔しい経験をしている。
ようやく入った会社も「成果主義」を掲げて社員を突き放す。メンタルヘルス不全の社員も急増した。会社に見切りをつけて転職を考えるころには、リーマンショックの直撃にあっている。2006年の「ライブドア事件」の影響もあったかもしれない。
このような見立てを、当事者たちはどう思うのか。広告営業の仕事をする31歳の男性は、
「昔はいらだちも多かったけど、期待を下げれば生きていけないほど貧しくもない。不幸というより不運、悪いのは自分じゃなくて生まれた時代。そう考えないと息が詰まりますよ」
と話してくれた。
吉田氏は、彼らに失った自信を取り戻し、能力を発揮し成長してもらうためには、「難易度の高い仕事を任せる」「変化を期待し伝え続ける」「遠くから見守る」「部下を責めない」といった育成スタイルを業務に取り入れることを提案している。