街を歩き回るのもコンサルタントの大切な仕事

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数値化できないファクトもある

   ただ、すべてのファクトが数値データによるものではない。数値化できないものもたくさんある。それを集めて、レコメンデーションに反映させる。そうした情報を集めるには、泥臭く歩いて体で感じることが一番大事だ。百聞は一見にしかず、ということでもある。

   集める範囲も、日本だけではなく、世界中に広がる。僕はクライアントのために海外出張に出るたびに、必ず街を歩くことにしている。

   だから、僕は今日、一日かけてハノイの街を歩いてみた。街ゆく人を観察する。楽しそうか、幸せそうか。オペラ座近くで記念写真を撮る、たくさんの新郎・新婦を見た。ビルはどんな建物か。結構、コロニアルな建物が残っている。

   ハノイに高層ビルは少ない。ホーチミン・シティとは対照的だ。テナントはどこが入っているか。ほとんどのブランドを見つけた。街頭で食事をする人たちが多い。住居にキッチンがない証拠である。まだまだ、豊かとは言えない。でも、家族がぴったり寄り添いバイクで駆け抜けて行く姿は、この上なく幸せそうに見える。

   そして、僕が観た風景を、現地の同僚たちにフィードバックする。それにより、背景となる事実をしることになる。より正確なファクトへと高めていく。

   プロフェッショナルは、一見、頭脳労働に見えるかもしれない。でも、そうではない。泥臭く、歩き回ることも、大切な仕事なのである。

大庫 直樹

大庫直樹(おおご・なおき)
1962年東京生まれ。東京大学理学部数学科卒。20年間にわたりマッキンゼーでコンサルティングに従事。東京、ストックホルム、ソウル・オフィスに所属。99年からはパートナーとして銀行からノンバンクまであらゆる業態の金融機関の経営改革に携わる。2005年GEに転じ、08年独立しルートエフを設立、代表取締役(現職)。09~11年大阪府特別参与、11年よりプライスウォーターハウスクーパース常務執行役員(現職)。著書に『あしたのための「銀行学」入門』 (PHPビジネス新書)、『あした ゆたかに なあれ―パパの休日の経済学』(世界文化社)など。
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