都内のシステム会社にディレクター職として勤務する、32歳女性Aさん。同じ会社のエンジニアの男性と結婚して、丸2年経ちました。部署もフロアも違うので、普段は夫の姿を見ることはありませんが、いまどんな仕事をしているか、だいたい把握しています。
その理由は、会社が社員にグループウェアの利用を命じているため。社員一人ひとりのミーティングや外出、イベントなどの予定を入力し、原則として社員全員が共有できるようになっています。
20代の女性部下と「非公開」の打ち合わせ
Aさんは、ときどき夫のスケジュールをのぞいては、「今日の帰りは遅くなりそうだな」とか「今週は比較的仕事に余裕があるから、会社帰りにデートに誘ってみようか」などと想像をめぐらせています。
ところが、ここのところ、夫のスケジュールに「非公開」の予定が入っていることが目につき、内心穏やかではありません。
Aさんの会社では、グループウェアに予定が入っていない時間帯には、原則として他人であっても強制的に予定を入れることができます。そこで、部外者に内容や参加者を知られたくないが、相手の時間を確保したいときには「非公開」で時間を押さえるのです。
通常の会議や外出はもちろん、部署やプロジェクトの飲み会も「公開」にしているのに、なぜここだけ「非公開」になっているのか。
夫の同僚たちの予定もチェックしてみると、同じ時間帯に「非公開」の予定を入れている人がいました。夫の部下、Bさんです。以前にも夫のスケジュールに、2人で「相談」というタイトルの予定を入れていた20代の女性です。
そのときは、帰宅後に何気なく「今日は遅かったね、Bさんの相談に乗ってたの?」と聞くと、夫は一瞬、不愉快そうな表情を浮かべて
「なんだ、知ってたのか。あの子もいま、正念場だからね」
と言っていました。
夫は特に隠すつもりはないようです。もしかすると、Bさんの方が「非公開」で夫の予定を押さえているのかもしれない。妻の私が見るかもしれないことを分かっていて、わざわざやっているのだろうか…。Aさんは疑心暗鬼になっています。
夫の最大のストレスは「部下との関係を疑う妻」
2012年1月29日付け読売新聞の「人生案内」で、作家の久田恵さんがこれと少し似ている相談に答えていました。40代の夫が20代の部下の女性に「癒されている」などと書いたメールを送っていることが分かった、という女性からの相談です。
夫を問い詰めたところ、
「彼女への感情なんて何もない。俺を信じろ」
と言うばかり。でも、出張の際に現地のデートスポットを調べるなど、怪しい行動は続いています。
久田さんは「仕事を生き甲斐とする男性」の一番の恐怖は「妻の不機嫌」だといい、相談者の夫の最大のストレスは「部下との関係を疑って、攻め立てる妻」だと指摘します。
そして、結婚の持続を願うなら「夫を信じるにはどうすればいいか」ではなく、「私は私で自前の人生を生きるわ」という覚悟とともに、
「やっぱり、妻の私じゃなきゃだめ、と思わせてみる」
との前向きな方向で結婚生活をやっていくしかない、とアドバイスしています。
これから男性と同じように働く女性が、さらに増えていくことでしょう。男女が同じ職場で仕事をする限り、こんな不安に駆られていてはキリがありません。久田さんのアドバイスは参考に覚悟を決めつつ、夫の予定監視はもうやめた方がいいのでしょうね。
(池田園子)