小宮山悟氏に学ぶ「立場を失うことを恐れない潔さ」

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   先日、仕事で元プロ野球選手&元メジャーリーガーの小宮山悟氏と対談しました。テーマは「勝てるチームづくり」。野球界で長年活躍された経験に基づくコメントは、的確かつ実践性に富んでいました。

   講演で「仕事で楽しいと感じることの大切さ」を訴えていた言葉に大いに共感し、講演後の会食で野球界の今後について熱く語る姿に接して感動しました。将来は是非とも監督になっていただきたいと感じた人物でした。

フロントに改革案を出して自由契約に

   小宮山氏は、早稲田大学に2浪して入学。推薦入学で入るような野球エリートではなかったそうですが、大学2年生秋には主戦投手となります。

   NPBからも注目され、1989年ドラフトでロッテから1位指名を受けます。この年のドラフトで入団したのは、後に日米の懸け橋となった野茂氏、与田氏、潮崎氏、「大魔神」佐々木氏、古田氏、新庄氏ら。華々しい同期のいたゴールデンエイジでした。

   現役中は精密なコントロールを活かして、40代中盤まで活躍。そのキャリアの合間には米国ニューヨーク・メッツで活躍しました。当時の監督バレンタイン氏とは親交も深く、日本人メジャーリーガーの最新情報をしっかり押さえているようです。

   入団後は、言いたいことは我慢せずに言う性格を発揮。千葉ロッテ時代にはフロントに改革案を提示して「うざい奴」と思われ、リリース(自由契約)も経験しました。

   野球界には、長年の間に積み重ねられたヒエラルキーがあります。小宮山氏はそれを知らなかったわけではないのでしょうが、主力選手になってからも、それを飛び越える「一選手の発言」をして、立場を失う経験をしているわけです。

   小宮山選手にしてみれば、フロントや監督・コーチに好かれるためだけに、言いたいことを我慢することが許せなかったのでしょう。もちろん、その発言は自分のためでなく後世のプロ野球選手を考えての発言ゆえ、周囲から支持されたのでした。

   さて、小宮山氏のように潔く仕事に取り組める背景には、何があるのでしょうか。もちろん自分に対する自信があるからでしょうが、それだけでなく、私には「失うこと」にむしろ楽しみを感じているようにも感じられました。

別の世界に「素敵なものが待っている」かも

   立場を気にしてプレイするくらいなら、別の世界に飛び出した方が面白い。好奇心の高さが、未練を感じさせないのかもしれません。確かに今より別の世界に「もっと素敵なものが待っている」と思えれば、地位や名声には固執しないでしょう。

   誰でも勝ち得た立場や名声を失いたくない、と気持ちは湧くものです。それを失う危険に直面すると、防護本能からとんでもない行動に出ることがあります。

   例えば、オーナーから解任を告げられた雇われ社長が「会社をつぶしてやる」と経営破たんを招くような投資を行ったとか、既得権と勘違いしていた立場から異動を告げられた社員が「訴えてやる」と大暴れしたような話は、あちこちで耳にします。

   それだけに、名声や立場にこだわらず、自分のやり方を貫く小宮山氏の姿勢には、清々しい潔さを感じました。

   そういえば橋下徹・大阪市長も、自分に改革ができる理由を「政治家をずっとやろうと思っていないから」とインタビューに答えていました。

   「次の選挙を考えたら、有権者に嫌なことはいえない」「今の日本の状況で、国民に好かれることなんか何も言えません」というのは、小宮山氏の潔さに通じるのではないでしょうか。

   余談ですが、小宮山氏は現役に未練なく燃え尽きたので、引退後は運動不足で10キロ以上体重が増えてしまったそうです。

高城幸司

高城幸司(たかぎ・こうじ)
1964年生まれ。リクルートに入社し、通信・ネット関連の営業で6年間トップセールス賞を受賞。その後、日本初の独立起業専門誌「アントレ」を創刊、編集長を務める。2005年に「マネジメント強化を支援する企業」セレブレインの代表取締役社長に就任。近著に『ダメ部下を再生させる上司の技術』(マガジンハウス)、『稼げる人、稼げない人』(PHP新書)。
「高城幸司の社長ブログ」
株式会社セレブレイン
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