日本企業においては、採用面接時に求職者が「有給休暇の取得状況は?」「育児休暇は取りやすいか?」などと確認するのはタブー、と言われることが多い。現実的にも職場の人員の余裕が減っており、いまだに「休むことは悪」とする傾向が根強い。
一方で、優秀な女性を積極的に採用し、長く働き続けてもらうために、ワークライフバランスの充実、なかでも「育児支援への理解」をアピールする企業もあるようだ。
スウェーデン「育児支援で企業の競争力は下がらない」
リクルートエージェントが転職に成功した女性を対象に調査したところ、採用面接で「企業の育児支援策」について質問した人は36.7%いたという。具体的には、次のような質問した人が、実際に採用に至っている。
「産休・育休が取得しやすい環境かどうか」(20代前半・未婚)
「産後2年間は休めるかどうか。復帰できるかどうか」(同)
「育児休業を取得する男性がいるか。上司はそれを承認しているか」(20代後半・未婚)
「急な休暇が必要なときの周囲の理解・協力はあるか」(20代後半・既婚)
「子どもがいてもリーダーとして働いている女性は多いか」(同)
「実際に子育てをしている人の数」(30代前半・未婚)
「勤務時間をどのくらい柔軟に調整できるか」(30代後半・既婚)
逆に言えば、こういった質問を嫌な顔せず受けられる会社でないと、優秀な女性が働きたがらないということだろう。都内のあるIT企業では、30代前半の業界経験者の女性マネジャー候補を募集する際に、「育児休業を3年まで認める」という条件を掲げたという。
多くの日本企業が過重なコストと考える「育児支援策」だが、ヨーロッパでは異なる考えが浸透しているようだ。九州経済連合会が作成した「少子化対策に関する欧州調査団」(2010年)の報告書には、スウェーデンの企業担当者の
「育児支援制度やワークライフバランスに理解の欠ける企業には、有能な人材が就職しない」
「長期の育児休暇や育児のための時短就労制度の採用が、労働生産性や企業の国際競争力を低下させるとの指摘は、企業経営側から聞かれない」
というコメントが記されている。
なお、育児休業の取得によって「昇進・昇格に差はない」と答えたスウェーデンの企業が85%にのぼっているそうだ。ワークライフバランスの意識の低い企業がまだまだ多い今のうちに、欧州企業をモデルにした「女性が働きやすい会社」を掲げるのは効果的かもしれない。