年々変化を遂げる、バレンタインデー。意中の男性に「本気チョコ」を渡して告白するのは、もはや昔の話のようです。女性同士で交換する「友チョコ」はすでに一般的ですし、感謝の言葉を添えて家族に渡す「ファミチョコ」も増えています。
都内の大手IT企業に勤める27歳OLのNさんも、「本気チョコは高校まででしたね~」と懐かしそうに笑います。それでも一応、毎年チョコの準備は欠かさないとか。さて、誰にどんなチョコを渡しているのでしょうか。
新人女子には「大事なPRの場」
Nさんは新卒で入社後、1年目から気合を入れてチョコを買い込みました。バレンタインデーを意識したのは数年ぶりのこと。お相手は仕事で関わる部署の本部長や次長など、8人の管理職です。
「当時、自分が所属するポータルサイトの広告バナーを、社内の別サイトに出してもらう仕事を任されたのですが、最初はお願いしに行っても『え、あんた誰?』といった感じで、まるで相手にしてもらえなかったんです。それが悔しくて悔しくて、これは顔を売らなきゃ仕事にならないと思って」
そんな矢先のバレンタインデー。この機会を使わない手はありません。
お相手が席にいるときを見計らって、「○○部新人のNです。いつも広告の件ではお世話になっております!」と元気よくあいさつして顔を売ります。本当は実績がなかったのですが、そんなことは関係ありません。
そして、1週間ほどあけてから、もういちど席に行き、「次長~、今度うちでこんな企画があるんですけど、次長のところでひとつ枠をいただけないでしょうか?」と頼みに行きます。そうすると、
「ああ、このあいだの君ね。その件なら担当の××に話してくれ。おーい、××。ちょっとこの子の話を聞いてやってくれ」
となる確率が高くなるのだそうです。
当時弱冠23歳にして、仕事ひとすじモーレツOLの画策。「チョコには愛はありません。仕事の一部ですから」と言い切ってしまうこのタイプが、会社で出世していくのも当然でしょう。
チョコが10倍になって返ってくる会社も
顔を売る必要がなくなってからも、Nさんはチームプレーで人間関係を維持しています。女性スタッフから数百円ずつ集めて買ったチョコを、小袋に分けてラッピングし、部署内の男性全員に「女性陣からです」と配ります。
こちらは、いわゆる「おくばりチョコ」。部署内でいちばん若い女の子たちに「配付役」を頼むところも抜かりありません。自分で配るよりも、黒幕っぽく見え隠れする方が重要な役割に見えるそうです。
「でもね、こんなささやかなものじゃなくて、バレンタインデーを一大イベントにしてる会社もあるみたいですよ」
Nさんによると、ある一部上場のオーナー企業では、バレンタインデーには社長室の前にチョコを持った女性社員が並ぶそう。イケメンの御曹司だそうですが、「それだけじゃなくて、その社長の太っ腹ぶりがまたスゴイんですよ」。
社長秘書にチョコを渡すと、リストに名前と部署を記入するように言われます。1か月後、ホワイトデーになると秘書から呼び出しを受け、「お返し」を手渡されます。包みを開けてみると、5000円もするような高級スイーツ。
プレゼントが10倍になって返ってくるのですから、まるで確実に大儲けできる「投資」のようなもの。ほんとにお得なサービス(?)ですが、これで女子社員の忠誠心をガッツリつかめるものなら、社長も安いものだと思っているのかもしれません。
(池田園子)