臨床心理士・尾崎健一の視点
復職のハードルが低すぎると再発率は高くなる
休職期間とともに、復職の基準も見直してはいかがでしょうか。リハビリ勤務が長引く人の中には、症状がよくならないまま無理に出社を開始した人が少なくありません。これを許してしまう理由のひとつに、会社の復職基準があいまいなことがあげられます。回復の不十分な段階での復職は、病状を悪化させたり寛解を困難にする場合があります。社員の今後の人生のためにも、回復を促進させる支援や基準であることが大切です。
復職には「規則正しい生活のリズムの回復」と「仕事に必要な体力と能力の回復」の両面が必要ですが、これを職場で練習することは困難です。最近はこれらを外部のリワーク機関に任せて実施した後、復職の可否を判断する会社も増えてきました。
復職基準としては、「リワーク機関で復職に向けた練習をすること」「復職前の2週間、図書館に毎日通うことができること」「復職後は朝9時に出社できること」といった具体的なもので設定しましょう。特に「朝が辛い」という理由で午後出社から始める職場が少なくありませんが、ハードルが低すぎると再度休職しやすくなります。最初から午前中勤務を前提に、生活のリズムを整えてから復職を許可した方が再発率が低いものです。
(本コラムについて)
臨床心理士の尾崎健一と、社会保険労務士の野崎大輔が、企業の人事部門の方々からよく受ける相談内容について、専門的見地を踏まえて回答を検討します。なお、毎回の相談事例は、特定の相談そのままの内容ではありませんので、ご了承ください。