社会保険労務士・野崎大輔の視点
A君に直ちに退職を求めることができない
就業規則の変更には合理的な理由がなくてはならず、特に労働条件の不利益変更に当たる場合には労働者との合意も必要です。逆に言えば、これをクリアすれば今回のようなルール変更が可能です。休職者の保護は社会的にも大切ですが、期限を定めておかないと会社や同僚の負担が大きくなり、あらたな過重労働を招くリスクもあります。就業規則の見直しは、職場の秩序維持には必要な措置といえるでしょう。
ただし、急な不利益変更は社員を混乱させるおそれがあります。一定の期間は適用しないなど、経過措置を設けた方がよいでしょう。また、新たに罰則規定を設けた際に過去の行為を処罰できないように(遡及処罰の禁止)、見直し後の就業規則を適用してA君に直ちに退職せよとはいえません。仮に新しいルールを「職場復帰後1年間」とするならば、規則見直しから1年間様子を見ることも考えられます。問題となるのがA君だけなら、個別に相談して期間を決めてもいいと思います。なお、休職やリハビリ勤務の期限満了後の扱いは、社員個別の事情があるので、「退職」「解雇」などと定めず、期限のみ定めておく方がよいと思います。