「既卒者」の選択肢が広がる可能性も
さて、秋入学は何も東大だけでは終わらない。実は世の中には、東大のことが気になって仕方がない大学というのがたくさんあって、中でも筆頭は慶応大学である。
そんな慶應大学が、一流企業内に「東大生専門のエリート幹部養成コース」が出来ることに我慢できるはずがない。すぐに自分たちも秋入学に全面移行し、学生の尻を叩きはじめるだろう。そして、慶応が気になって仕方ない早稲田、早稲田が気になって仕方ない中央や上智といった大学に、次々に波及していくものと思われる。
そして、筆者がもうひとつ期待することがある。例の「既卒3年以内は新卒扱い」という扱いとのコラボだ。
ソニーのように、大手企業にはリップサービスではなく本気で3年以内既卒者に期待している向きがある。これは「3年までは新卒として見てあげるよ」という救済措置ではない。
人生寄り道してないだけが取り柄の新卒とは違い、むしろ寄り道してでも、レールのない世界を自分で進んだ経験を持つ人間を貪欲に求めているということだ。
ゆくゆくは、入社時期は20代であればいつでも可、能力を持ちつつ、それを実社会で活かしてきた人間が、それぞれの経歴に相応しい位置からスタートする時代が来るかもしれない。
東大の秋入学は、そんな明るい未来を感じさせてくれる改革だ。筆者も全面的に支持したい。
城 繁幸