即戦力を受け入れるキャリアパスが新設される
その頃、同じようなやりとりが、東大生と大手企業との間で繰り広げられていた。
当たり前の話だろう。東大生ほど「俺は誰よりも頭がいい特別な人間である」と腹の底から信じている連中はいない。中でも浜田君のような行動力の伴うタイプは筋金入りの自信家で、だからこそ学生時代にあちこち押しかけては経験を積んでいるわけだ。
そんな人間が「何もしていない同期より1年遅れの初任給」に納得するわけがない。
従来なら面接官が「おまえは分かってない」と浜田君に一言いえば済んだのだが、困ったことに今の日本企業が最も欲しいタイプは、そんな自信過剰気味の行動派人材だ。というわけで、企業は争って、彼らのためのキャリアパスを別に作り始めた。
普通の新人なら社員一級からスタートし、数年おきに昇給していくところを、秋入学の東大君だけは、最初から二級、人によっては三級の主任クラスに格付けするようにし始めたのだ。
「わが社は社員二級からスタートさせましょう」
「うちは主任、初年度は年俸500万円払いますよ」
いろいろな内定を見比べた結果、浜田君は結局、1年生の時に内定をもらったユニクロに就職することに決めた。なぜなら、成長の見込める中国市場で初年度から店長ポストを提示されていたからだ。