「おかしいのは自分ではない」という証拠を押さえる
米国では、ガスライティングの手口を解説した本も出ているようだ。「Gaslighting: How to drive your enemies crazy(あなたの敵を発狂させる方法)」という書籍の一部を翻訳した「ガスライティング詳細解説」というサイトを見ると、その周到さと法律違反も辞さない異常ぶりに驚かされる。
ターゲットを見ながら数人で囁きあい、冷笑する。自分のことを話しているのかと尋ねてきたら「なんだい、みんなの噂になるような重要な人物だと思ってるんだ。妄想じゃないの?」と突き放す
ターゲットの机に変態趣味の雑誌を仕込み、同僚に発見させる。上司の卓上ライターやペン、金メッキのレターオープナーを、ターゲットのポケットに滑り込ませる
ターゲットが空港を利用する日に、荷物に覚せい剤やピストルを仕込んでおく。免許証を複製し、ターゲットが免許証を偽造したことにする
密かに合鍵を作って家に侵入し、帽子やジャケットのサイズを変え、身体に異変が起こったように思わせる。調味料やコーヒーの味、香水のかおりを微妙に変える。椅子の高さを微妙に変える。ガソリンを抜くと窃盗と疑われるので、逆に毎夜注ぎ足す
映画「ガス燈」でバーグマンを救ったのはジョゼフ・コットン演じる私立探偵だったが、普通のビジネスパーソンが探偵を雇うのはなかなかむずかしい。
新田氏は、個人の防衛策として、産業医の診断だけを信用して休職や退職をせず、信頼できる人に紹介してもらった医師のセカンドオピニオンを取ることを推奨する。また、つきまといなどの証拠を押さえるために、ICレコーダーやカメラを準備しておくことも考えられるという。
しかし、証拠を押さえたところで、会社を相手取った裁判を起こすのも負担が大きい。少なくとも「おかしくなったのは自分の頭ではなく周囲だ」という確信を持ったら、よりよい条件を引き出して、そんな会社はさっさと辞めた方がいいのかもしれない。