仕事を続けているだけで認められる世界がある!
Aちゃんは美人で頭もよく、男性社員の人気もあったし、回収の成績も私の倍くらいありました。それなのに…。そこから堰を切ったように、同期や同僚が会社を辞めていきました。突然会社に来られなくなり、退社の手続きすらしないまま、いなくなってしまった人もいました。
人が減って風通しの良くなったコールセンターで、ある日私は成績表を見上げました。
「え、上がってる…」
仕事ができる人が辞めた結果、皮肉にも私の回収成績はどんどん上がっていったのです。
仕事を続けているというだけで、上司にも評価されるようになりました。我ながら「なんてハードルが低いんだ」と思いますが、生まれて初めて仕事を誉められた私は、嬉しくて眼がしらが熱くなりました。
「誰もやりたがらないから、みんな辞めていってしまう。仕事を続けているという、ただそれだけで認められる、評価される世界があるんだ」
督促をしていると言うと、「大変だね」「よくできるね」と言ってもらうことがあるのですが、いまでは「こんなにブルーオーシャンで(競争者が少なくて)おトクな世界もないなあ」と半ば本気で思えるようになっています。
他に働き口のある頭のいい人は、みんな辞めていってしまうし、あえてこの仕事を選んで参入してくる優秀な人も少ない。コツをつかめば長く働けるし、転職もできる。機械に置き換えられる仕事でもない。ほめてくれたり、面白がって本に取り上げてくれる人もたまにいる。
そう考えると「嫌われ仕事」は、実はとてもおいしいお仕事なのではないでしょうか。督促の他にも、そんな仕事がどこかに隠れているのかもしれません。
N本(えぬもと)