いろいろな趣味を持つ、都内の会社員Aさん。そのひとつに電車に乗って旅をする、いわゆる「乗り鉄」があります。学生時代から二輪車で全国を回っているうち、崖に沿った未舗装の小道の先にあった「秘境駅」に遭遇。地図や時刻表を片手に行程を調べて再訪するうちに、今度は鉄道の旅にハマったのだとか。
アラフォーですが結婚はしていないため、年末年始など長期の休暇が取れる時は、「日本一早い海岸からの初日の出を見に行く」「新装なった競馬場を訪問する」などと理由をつけてブラリと旅に出ます。
iPhoneでスタンプラリーを楽しもうと思ったが
「最近までは、ラジオが手放せなかったんですよ。電車に乗ってイヤホンでラジオを聴いていると、意外とその地方のお得な情報を知ることができるんです。でも、去年からはiPhone。アプリを入れればラジオも聴けるし、画像もすぐ撮れるし、ちょっとしたメモもその場で書けますからね」
この年末年始は、大阪へ出てみました。東京で生まれ育ったAさんは、初めて大阪の私鉄に乗ってみたいと考えたのです。
「この歳になると、冬場は秘境駅へ行くとかローカル線を訪ねるとかは、正直しんどい(笑)。で、大阪ならいいかなと。大きな街だから、泊まる所やATMの心配もないし」
もうひとつ楽しみがありました。スマートフォンとGPSを利用したチェックイン機能を使って、駅に到着するたびにスタンプを集められるコンテンツを試してみようと考えていたのです。
昨年秋に買ったばかりのiPhone4Sと旅に出るというだけで、何となくワクワクしていたAさん。早起きして新宿駅で始発の電車をつかまえ、中央線回りで西下。途中、気が向いたら下車し、スマートフォンでスタンプを集めるつもりです。
諏訪のあたりでは駅近くの温泉に行ったり、のんびりとした旅程でした。
「そこから先は、特急列車の追い越しを待ったりして、スタンプを集めるチャンスだな、と思ってたんですけどね。ラジオを聴きながらエリアが変わるたびにアプリを操作したり、スタンプ収集の通信を頻繁にしていたからですかね、あれよあれよと言う間に電池がなくなっちゃって…」
電気店で節電の仕方を教えてもらう
Aさんはコンセントの付いた充電ケーブルは持っていましたが、電池式の充電器は持っていません。しかたなく追い越し待ちで止まっている間に、駅舎で頼んで充電させてもらいました。
しかし、追い越し待ちといっても、せいぜい10分、15分のこと。待つとなれば長く感じても、充電するには短すぎます。なかには充電を断る駅もあり、とうとうiPhoneは電源が切れてしまいました。
結局、1日がかりの大阪行きの半分ほどは、スタンプを集められないだけでなく、ラジオも聴けなくなって時間を持て余す感じになってしまった、とAさん。
「とりあえず名古屋で途中下車し、駅前の電気店で電池式の充電器と電池を買って即充電。大晦日、元旦になるとキャリアのショップも開いているかどうかわからないので、電気店の店員さんに節電の仕方を教えてもらって、メールの自動更新とかはオフにしたんだけど、やっぱりGPS通信は電池を食うみたいで…」
充電中も通信をしたりと使い続けたので、なかなか100%まで蓄電できず、「単3電池を買い続ける旅みたいになっちゃいました」とAさん。それはそれとして、スタンプもそこそこ集まり、思い出深い年末年始の旅となったそうです。
井上トシユキ