臨床心理士・尾崎健一の視点
「新人のくせに」も会社都合の勝手な考え方
マネジャーの苛立ちも分かりますが、そのような「業務至上主義」の考え方しか取れないとすれば、不幸なことではないでしょうか。社会人には責任ある行動が求められるとはいえ、社会や会社のために個人が存在するわけではありません。恋愛したり結婚したり、子どもを産んだりすることが「新人のくせに」「中堅社員のくせに」「管理職のくせに」無責任などと言っていたら、誰もが会社のために一生を捧げなくてはならないことになります。それが少子化という社会的な大問題の一因になっているかもしれません。
これまで「子どもを産むなら会社に迷惑をかけるな」「それが嫌ならヨソの会社に行け」「女の結婚や妊娠は会社を辞めてするのが当たり前」という声があったかもしれませんが、生産年齢人口も減っている現在、意欲や能力のある人に働いてもらわなければ社会の活力は維持できません。そういう意味では、いまの日本社会で存在する限り、企業はいわゆる昭和的な家庭観、労働観を脱したやり方を選ばざるを得ないでしょう。まずは「育児休業者の代わりの人員を補充しない」といった会社都合の制度を改めるところから始めてはいかがでしょうか。
(本コラムについて)
臨床心理士の尾崎健一と、社会保険労務士の野崎大輔が、企業の人事部門の方々からよく受ける相談内容について、専門的見地を踏まえて回答を検討します。なお、毎回の相談事例は、特定の相談そのままの内容ではありませんので、ご了承ください。