仕事中に「エロ動画」見てもいい会社なんて嫌だ…

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   右肩上がりの高度成長を生きてきたベテランと、低成長時代を生きる若手とが混在する、現在の職場。世代間の経験や考え方のギャップが、時に摩擦を生むこともある。

   ある会社では、ベテラン社員が仕事らしいことをせず、仕事中にアダルトサイトを見たりしているのに上司が注意しないと、若手社員が腹を立てている。

上司に「お前の仕事に関係ない」と言われ不満

――中堅メーカーの人事です。研修で本社に来ていたA君から、最近支店に入ってきた「支店長付き」のBさんのことが気になってしようがない、と相談を受けました。

   朝は毎日遅刻してくるし、お昼前に食事に出て、午後2時すぎまで帰ってこない。自分の席にいるときもお茶を飲んだり新聞を読んだりしていて、仕事をする様子がまるで見られないそうです。

   たまにパソコンに向かっていると思ったら、トランプのゲームに夢中になっていたり…。この間、イヤホンをつけていたので何をしているのかと思いきや、アダルトビデオの試聴らしきことをしていたのだそうです。

   そんなBさんを、支店長も部長も注意せず、A君が「エロ動画見てましたよ」と報告しても、まるで相手にしてもらえません。そればかりか、A君が不満をあらわにすると、こう言われたそうです。

「あのな、Bさんは、お前が入社するずーっと前から、この支店の最大の功労者なんだ。この支店をこの場所に出せているのも、あの人のおかげなんだよ。エロ動画がなんだ?お前の仕事に関係ないだろ」

   実はBさんは、5年前に病気で倒れるまで、当社のトップセールスマンでした。バブル期には法人営業として大きなプロジェクトをいくつもまとめ、敏腕で知られた人です。いまは後遺症で激務に耐えられませんが、当時の取引が続いていることもあり、この支店に復帰したのでした。

   しかしA君は、「ただでさえ給料が少ないのに、エロ動画を見ているBさんに吸い取られていると思うと、やる気だってなくなりますよ!」と納得できない様子。こういうとき、どうやって対処すればよいものでしょうか――

社会保険労務士・野崎大輔の視点
エロ動画の閲覧だけはやめてもらった方がいい

   A君が不平を言うのも無理はないと思います。これから活躍する若手社員のモチベーションが低下して生産性が落ちても、会社としてはBさんを厚遇することを優先するということでしょうか。功労者に報いる姿勢は大事だと思いますが、職場で遊ばせておいて高給を払うのはいかがなものでしょうか。Bさんの今の状況は会社が何もさせてないからでしょう。Bさんでもできそうな仕事をやってもらったらいかがでしょうか。どうしても仕事ができないのであれば、功労者であるBさんに退職金を少し上乗せして辞めていただくというのも1つの手段だと思います。辞めさせるのが難しいのであれば正社員ではなく、嘱託契約に切り替えて給与を切り下げて雇用し続けることも考えられます。

   なお、業務用パソコンや社内システムにコンピューターウイルスが感染するリスクは高いので、アダルトサイトの閲覧はただちにやめてもらうべきです。女性社員に対する環境型セクハラになるおそれも高いです。

臨床心理士・尾崎健一の視点
ベテラン社員の苦労話や顧客を若手に引き継ぐ

   若い人たちは信じられないでしょうが、いまのベテラン社員の中には若いころに「将来は厚遇するから、いまは安月給でガマンしてくれ」と言われながら、がむしゃらに働いてきた人がいることは事実です。だからといって、厚遇を保証できるようなご時勢ではありませんし、年功序列を全面的に肯定するわけでもありませんが、第一線を離れたらただちに会社から排除すべき、という考えばかりが正論ともいえないのではないでしょうか。

   A君の心理的な不満は、Bさんにどういう功労があったのかを話すことで、少しは和らぐところもあるのではないかと思います。単なる好景気の武勇伝では白けてしまいますが、いつの時代でも苦労話はあるものです。そういう情報を聞いて引き継ぐことは、将来の会社や仕事のあり方の指針になる場合もあると思います。また、支店にBさんを置いているのは、顧客取引の信頼関係を担保する意味もあると思います。今後のために先方のキーマンとの人間関係を引き継いでおくことも大事でしょう。


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(本コラムについて)
臨床心理士の尾崎健一と、社会保険労務士の野崎大輔が、企業の人事部門の方々からよく受ける相談内容について、専門的見地を踏まえて回答を検討します。なお、毎回の相談事例は、特定の相談そのままの内容ではありませんので、ご了承ください。

尾崎 健一(おざき・けんいち)
臨床心理士、シニア産業カウンセラー。コンピュータ会社勤務後、早稲田大学大学院で臨床心理学を学ぶ。クリニックの心理相談室、外資系企業の人事部、EAP(従業員支援プログラム)会社勤務を経て2007年に独立。株式会社ライフワーク・ストレスアカデミーを設立し、メンタルヘルスの仕組みづくりや人事労務問題のコンサルティングを行っている。単著に『職場でうつの人と上手に接するヒント』(TAC出版)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

野崎 大輔(のざき・だいすけ)

特定社会保険労務士、Hunt&Company社会保険労務士事務所代表。フリーター、上場企業の人事部勤務などを経て、2008年8月独立。企業の人事部を対象に「自分の頭で考え、モチベーションを高め、行動する」自律型人材の育成を支援し、社員が自発的に行動する組織作りに注力している。一方で労使トラブルの解決も行っている。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』(講談社)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。
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