フェイスブックで「徳川検定」を「いいね!」してしまった

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「なんでまた、フェイスブックの徳川検定やったんですか?流行ってるから?」

   ある友人(30代♂)から訊ねられました。フェイスブックに限らず、SNSサイトはしばらくアクセスしていないと、「あなたの友人がこんなことをしました!」とかって余計なお知らせをメールで送ってきやがるんですね。

   お知らせメールを解除すればいいじゃん、と言うでしょうが、こっちが頼んでもいないメールを勝手に送りつけられて、こっちが手間暇かけて解除するってのは筋が違うと思うわけです。

「結果を送信って、どこに送信すんねん」

   先日も、まぐまぐに登録しているあるメールマガジンの購読手続きをしたところ、翌日から「公式」と銘打った何の役にも立たないメルマガが20通近くも送りつけられてきたうえ、スパムが激増しました。

   頼んでもいないメルマガを解除するのに時間を取られ、スパムをフィルタリングするのに時間を取られ、自慢の(ほとんど使っていない)iPhone4Sの電池残量はガンガン減るわ、これだからバカなITベンチャーはいつまで経っても胡散臭がられるんだ、と怒りに震えました。

   とりあえず、二度とま○まぐは使わないから、そう思え、と。

   で、フェイスブックやmixiからのお知らせメールも、フィルターかけてゴミ箱直行にしてあります。が、先日、いったい何が書いてあるのかとゴミ箱を漁って読んでみました。

   そのなかに、別の友人が画像をアップしたみたいなことが書いてあったので、自慢の(ほとんど使っていない)iPhone4Sでフェイスブックにアクセスしてみたら、徳川検定の結果画像があり、なんだろうと思ってクリックしてみたら検定のページに飛ばされ、その気もないのに、ついつい「いいね!」を押してしまい、そうしたら検定され、「結果を送信って、どこに送信すんねん」とボタンを押したら自分のページに徳川慶喜の感じの悪い画像がデカデカとアップされてしまったと、まあ、そういうワケなのです。

   「なんだ、またSNSマーケティングについて、何か調べているのかと思いましたよ」と友人。え?あれって、何かマーケティングなの?ただの遊びじゃなかったんだ…。

「出版社とか観光向けの博物館とか、いくつかの企業がアライアンスを組んでやってるんですよ。いま、SNS上でコミュニティをつくったりする企業のマーケティングが流行ってましてね」

批判を異常に警戒する日本企業

   へえ、あんなもので本が売れたり、観光用の博物館に人が来たりするもんなんでしょうか…。

「実際のところは外部からはあまりわかりませんが、必ずしも上手くはいってないみたいですね。著名な商品をもつ有名企業でも、100人もユーザーを集められていないところもありますから」

   徳川検定のような動きや仕掛けが単純なものではなく、スマートフォンのハイスペックな機能を活かした複雑なゲームや地図などとの連携、独特なアプリの提供など、イベントをしかける感じでいくらでもアイデアがわいてきそうなものですが。

「海外では、相手の電話番号を知らなくても、タダで電話がかけられるアプリをプレゼントして集客した企業があったり、BMWなんかはCM動画の投稿コンテストをやって話題になったりしてるんですけどね。日本では、そこまではまだですね」

   日本と外国とでは、ネットに対する見方、距離感のようなものに違いがあるからではないか、とも思います。日本の企業は、ネットへの「自社にとって都合の良い情報発信」には熱心ですが、ユーザーからの情報受信に対しては、炎上や荒らしを警戒するあまりか、極めて消極的です。

   言うことを聞くユーザーには余計な情報も含めて提供するが、言うことを聞かないユーザー、批判を返してくるユーザーなど顔も見たくもない、といった感じでしょうか。

   たとえば、「相手の電話番号を知らなくてもタダで電話がかけられるアプリ」の配布などは、日本企業ではとてもできないでしょう。「イタズラ電話をするアホなユーザーが出てきて、我が社の社会的責任が問われたら、どうするんだ」というわけです。

外国に置いていかれる、とは思うけど…

   でも、外国企業であれば、

「確かにイタズラ電話にも使えるアプリだが、我が社がイタズラ電話を推奨しているわけではなく、良心的なユーザーどうしのコミュニケーションを活発にしてもらうために配っているのだ。イタズラ電話については、それを行うユーザー自身に罪を問うべきである」

ぐらいのことを堂々と言い、社会もまたそれを是認するような気がします。

   日本を含め韓国や中国などのアジアでは、一事が万事とばかりに、企業や個人のミスを針小棒大にわざわざ叩くことがネット文化のようになっているきらいがあることは否定できません。

   さっき「二度とま○まぐは使わないから」なんて言っておきながら矛盾しているのですが、叩かれることを恐れるあまり、ネットと高機能なスマートフォン、ガラケーを用いた面白い仕掛けが出てこないのであれば、それはそれとして、つまらないことだと思います。

   なにより、アプリの開発やネットを利用したアイデアのレベルが、外国と差がついていく一方となってしまうのは、結果的に損です。

「とはいえ、与えられた環境、条件のなかで考えていくしかないですからね。偉そうに言う井上さんは、何か面白いアイデアがあるんでしょう?」

   自慢のiPhone4Sも満足に使えてないのに、何かあるわけがないじゃない…。


井上トシユキ

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井上トシユキ
1964年、京都市出身。同志社大学文学部卒業(1989)。会社員を経て、1998年よりジャーナリスト、ライター。東海テレビ「ぴーかんテレビ」金曜日コメンテーター。著書は「カネと野望のインターネット10年史 IT革命の裏を紐解く」(扶桑社新書)、「2ちゃんねる宣言 挑発するメディア」(文藝春秋)など。
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