「スマホがつながらなくて困る」 喫茶店マスターの嘆き

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   iPhone4Sを購入してから1か月弱。なんとか「使ってる感」を味わいたくて、アプリ解説のムックなども買ってみましたが、いまひとつピンと来るものがありません。

   とにかく毎日持ち歩いていて、意外と調べものなどのブラウジングを多用していることには、自分自身で気づきました。しかし、調べものをしているということは仕事や面談をしているわけで、連絡用にガラケーを併用していると、逆に調べもの意外の用途であまり使わないため、アプリもほとんど必要としないのです。

向かいの店の客がみんなWi-Fi使ってる

   iPhone4Sの動作自体はストレスもなく、東京23区内の山手線、中央線周辺にいると、3Gでも通信速度に不満はありません。

「へえー、そうなんですか。実は、ウチはちょっと特殊な事情でスマホが使いにくくて、困っちゃってるんですよね」

   そう話しかけてきたのは、東京・渋谷区内で喫茶店を経営するAさん(30代後半)。Aさんの店は繁華な場所にあるのですが、それが裏目に出ているのだとか。

「真向かいに有名外食チェーンがあるでしょ?あそこって、無線LANのホットスポットを提供してるじゃないですか。それで、混線っていうんですか?Wi-Fiにしてると接続がすぐ切れちゃうとか、なかなか繋がらないとか、そんなのばっかなんです。あの店でノートパソコンを使って仕事をしている人は昔から多いし、なによりもスマホを操作している人がここ最近で格段に増えましたからねぇ」

   Aさんは、草野球やバイクのツーリングが趣味で、仲間との連絡に掲示板やSNSサイトへのアクセス、それにメールのやり取りが欠かせません。

   これまでは、お客さんの来店が一段落した時間帯にネットへ接続していたのですが、なかなか繋がらなくなり、いまでは試してはみるものの諦めることがほとんどになってしまったそうです。

「自分の昼飯や晩飯の時間には店を離れるので、そのタイミングでネットにアクセスして、一気に連絡など済ませちゃう(笑)。それが当たり前になると、まあ、ストレスもないけど」

不満はあるけど昔と比べればいいことずくめ

   ただ、もうひとつ別の趣味があり、そっちでは悔しい思いをすることも…。

「土曜日の競馬。スマホから電話投票をしていたんだけど、最近はもう如実に繋がらないもんだから、狙ったレースを直前まで予想して投票するってのができなくなっちゃって。金曜日の夜までに考えて、土曜日の朝、店に来るまでに投票を終える。その日の馬場状態の変化や直前の馬の気配といった、直近の要素を予想に加えることができなくなったので、厨房の裏でラジオ実況を聴いていて『しまった…!』って思うことが増えたなぁ(笑)」

   とはいえ、真向かいの大手外食チェーン店は繁盛店。移転することも、ホットスポットのサービスを取りやめることも考えられません。

「どうしても、っていうのなら、ウチが移転するってのもあるっちゃある(笑)。でも、ウチだってたくさんのお客さんが常連さんでついてくれてるから…。向かいのチェーン店が満員で、それで仕方なしにウチに入ってきたんだけど、気に入ってもらってお馴染みさんになってくれたお客さんだって少なくないんですよ。
こちらが余裕をもって、(3Gなど)通常接続のスピードで間に合うように投票すればいいだけか、とも思いますね。要は、スマホのおかげで便利な恩恵にあずかってた自分を、それ以前のスタイルにちょっと戻せばいいだけなんですよ。うん、最近は、自分にそう言い聞かせてますよ」

   最後は、なかなか味わい深い話となりました。


井上トシユキ

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井上トシユキ
1964年、京都市出身。同志社大学文学部卒業(1989)。会社員を経て、1998年よりジャーナリスト、ライター。東海テレビ「ぴーかんテレビ」金曜日コメンテーター。著書は「カネと野望のインターネット10年史 IT革命の裏を紐解く」(扶桑社新書)、「2ちゃんねる宣言 挑発するメディア」(文藝春秋)など。
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