営業マンには、やっぱり「楽観派」が向いているのか?

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   「楽観派」と「慎重派」、どちらのタイプが営業マンに向いているのか――。現場でよく話題になるテーマです。私が若い頃、銀行で渉外係をやっていた時代に、そんな議論を地でいく実例がありました。

   Aさんは、とにかく明るく快活で新規訪問が得意。新規個別訪問で預金や小口融資をバンバン獲ってくるタイプですが、やや仕事は粗く、せっかく仲良くなった取引先と油断から起こすトラブルもけっこうありました。

   Bさんは、まじめでおとなしく、新規先の獲得はあまり積極的ではないタイプ。その分、取引先からは絶大な信頼を寄せられ、取引を太くすることに関しては右に出るものがない。そんな感じでした。

「メゲるって何?」という先輩もいた

「典型的な営業マン」なんて言われるけど
「典型的な営業マン」なんて言われるけど

   私は当時、係内では最年少の「坊や」でしたから、先輩方からなんでも学ぼうと、朝夕の時間があればいろいろ質問をしてみたものです。まずAさんに、こう聞いてみました。

「どうしてそんなに新規先が次々と獲れるんですか?僕なんか門前払いばかりで、新規訪問ばかりやっていると、自分のどこが悪いのかとメゲちゃって辛いです」

   するとAさんは、こんな感じで自らのポリシーを語ってくれました。

「バカだな、俺だってそんなに行く先々で新規が取れている訳じゃないよ。断られている数だって、お前の数倍あると思う。メゲるって何?こっちのことなんか少しも分かっていない先方の勝手で断られる訳だからさ。気にしない、気にしない。断られたって責任なんかこれっぽっちもない。既存先は神経ばっかり使って疲れるけど、その点、新規はおもしろい。失うモノがないからね」

   一方のBさんは、こんな風に自分のスタイルを明かしてくれました。

「一から十まで、とにかく慎重にいくこと。相手が何を望んでいるのか、仮に望んでいなくとも何をしてあげたら喜んでもらえるか、考えに考えて応対することかな。それと、細心の注意で絶対にミスはしないこと。あらゆる面で手を抜かずミスさえしなかったら、絶対に取引は太くなるよ。新規訪問で断られて、自分のどこが悪かったのか出口のない悩みにはまるぐらいなら、既存先を重点的に営業する方が効率的だよ」

結局は「大胆と細心」のバランスが大事

   このように、それなりの成績をあげている先輩たちでしたが、2人を管理する課長は、常々小言を言っていました。Aさんには、「もっと慎重に接客しろよ。たくさん新規を獲得したって、手で水をすくっているみたいでボロボロ落ちていくじゃないか」と注意。

   Bさんには、「もっと失敗を恐れずに新規先も訪問しろよ。新規先を増やさなければどのみち行き詰るぞ」とハッパをかけます。そして、

「足して2で割れば、二人ともすごい営業になるんだけどなぁ」

と嘆いているわけです。

   そんな部下の状況を、当時の支店長もよく分かっていたようでした。営業畑一筋で実績を積み上げた、いわば「叩き上げ」タイプ。普段は直接部下指導に口出しをしない人でしたが、渉外係の実情を見てか、ある飲み会の席で私に持論を聞かせてくれました。

「戦国の世において、織田信長が天下統一にもっとも近づいた初めての武将に成りえたのは、彼は常に『大胆かつ細心』を心がけていたからだ。我々の営業も同じこと。大胆ばかりでは抜けが多くなるが、細心ばかりでも大きくは伸びていかない。ヒントは、何をするかではなく、何をしないか。すなわち、必要のないところへの『細心』と、やってはいけない場面での『大胆』をしないことだ」

   なるほど。「大胆=楽観派」と「細心=慎重派」は、どちらか一方に偏りすぎるのは大成しない。やってはいけない「楽観」と必要のない「慎重」を排除するのが秘訣であるというのが、経験から生まれた支店長の考えでした。

   新規先では、たとえ断られても他人責任で通り過ぎる「大胆」さで通し、取引が出来たら自己責任を意識した「細心」さをモットーとし、上手にバランスさせること。この含蓄深い話は、後に自分が部下を持って指導するときにも、とても活きました。

※営業を中心としたお仕事の悩みについて、筆者がお答えします。

大関 暁夫

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大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。執筆にあたり若手ビジネスマンを中心に仕事中の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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