新入社員はどこまで配属先にこだわるべきなのか

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   プロ野球のドラフト会議で、東海大・菅野智之投手の交渉権を、土壇場で1位指名した日本ハムが獲得した。本人は巨人・原監督の親戚ということもあり、巨人単独1位指名が濃厚だと思われていた中でのサプライズだった。

   もっとも、勝手に“相思相愛関係”とやらを作り上げてドラフト制度を形骸化してきた巨人関係者や原一族がどう思おうが、他球団からすれば知ったこっちゃないわけで、そういう現状に風穴を開けた日ハムの英断には素直にエールを送りたい。

   ただ、世間には「若者には好きな場所に就職させてやるべき」という声があるのも事実だ。少なくとも選考を受ける権利くらいはあるわけで、それすら認めていない現状は憲法違反だという指摘もある。果たしてドラフト制度はどうあるべきだろうか。

まずは腐らず「初任地」で成果を上げよ

   本人の意思を尊重すべき、という人の多くは、新卒の就職活動を念頭に置いているものと思われる。なるほど、選ばれるかどうかはともかく、一般の学生は自分の行きたい企業の選考を自由に受けることができる。そして企業も学生も、お互い意中の相手に選ばれるよう努力することで、経済はさらに活性化することにもなる。

   ただ、プロ野球にはそれ以前に、プロ野球全体として、サッカーなどの他スポーツはもちろん、映画、テレビ、携帯電話、ゲーム、ネットといったエンタメコンテンツと戦い、ファンをもぎ取らねばならないという至高のミッションがある。そのミッションのために、個人の意思がある程度阻害されるのはいたしかたないというのが、筆者の意見だ。

   そういう意味ではプロ野球全体が一つの組織であり、ドラフトは就職活動ではなく、新人配属と呼ぶ方がより正確だ。

   大手企業では、たいてい春先の新人配属で、数人は泣く新人がでる。自分の意中ではない部署に配属された新人だ。そんな時、僕はいつもこう言っていた。

「誰もが意中の部署に配属されるわけではないし、その部署がいくら欲しいと言っても、特定の部署にだけ優先的に人材を供給するわけにはいかない。すべての部署が機能してこそ、組織全体が機能し、発展していくのだ。だから、まずは腐らず配属先で成果を上げ、その時にもまだ意中の部署が別にあるならば、社内公募やFA制度といった制度を利用して移ればいい。遠回りだけど、結局はそれが、自分自身と、自分の進みたいと願った組織のためになるのだから」

   お祖父ちゃんもナベツネもえらくご立腹のようだけど、俯瞰的な視点からのアドバイスを彼にしてやれる人がいることを願っている。

城 繁幸

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人事コンサルティング「Joe's Labo」代表。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種経済誌やメディアで発信し続けている。06年に出版した『若者はなぜ3年で辞めるのか?』は2、30代ビジネスパーソンの強い支持を受け、40万部を超えるベストセラーに。08年発売の続編『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』も15万部を越えるヒット。ブログ:Joe's Labo
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