営業担当者の日々の行動は、どう管理されていますか――。クライアントの現場調査でこう尋ねると、「活動内容を書かせた『日報』を毎日提出させています」という答えが非常に多く返ってきます。その使いみちは「部下の担当先の進捗チェック」が主なもの。
そこで少し意地悪をして、「Aさんの日報の、昨日のチェックポイントは何でしたか?」と尋ねると、たいていの管理者は「うーん、ちょっと個別の具体的な内容までハッキリと覚えていないのですが…」という感じで、答えに窮してしまうのです。
紙に書いた報告なんてアテにならない
これは何を意味しているのか。せっかく作った日報も、パラパラと読み飛ばしが普通。回覧検印を押すだけで、ほとんど読まれずじまいのひどい職場もあるということなのです。
知り合いの営業コンサルティング会社が複数のクライアント先を対象に調査したところ、日報の内容を基に部下へ日々フィードバックしている管理者の比率は、5%にも満たなかったそうです。
部下だって、管理者が日報を一生懸命読んでいないことくらいお見通しです。とりあえずイイことを書いておけとばかり、完全なウソではなくても、かなり甘い判断で「先方好感触」「もうひと押し」みたいなことを平気で書き連ねたりすることにもなります。
私もはじめて現場を任された頃に、痛い目にあった経験があります。担当者たちの日報を信じてタカをくくっていたところ、期末近くになっても店の実績が伸びずに追い込まれてしまいました。
藁をもつかむ気持ちで過去の日報を読み返し、矢継ぎ早に「あの好感触先はどうなった?」などと聞いたものの、口を突いて出るのは「あのあと、いきなりライバルが参入してきまして、信じられない条件で持っていかれました」みたいな言い訳ばかり。結局、管理者である私が泣きを見るはめになってしまったのです。
そこで私は考えました。日報に書かれた文字情報は正確性を欠くし、すべてを書き込ませるのも非効率だ。文字を「目」で追いかけるのではなく、自ら部下から情報を引き出して、より有用な情報を「耳」で仕入れる必要があると。
そこで、部下に対して「日報は時間をかけず、簡潔に書いて」と頼みました。時間がなければ、訪問先と面談時間だけでもOK。帰店後にそれを提出させ、一人ひとりと直接面談。私からあれこれ尋ね、訪問先名が書き込まれた日報に、私が情報を書き込んでいくことにしたのです。
悪い情報の責任を問わず、解決に専心する
相対で突っ込んだ質問をすることで、担当者はいい加減な報告ができなくなりました。管理者は、個別先の状況を十分に把握でき、どのタイミングで同行訪問すべきかなども図りやすくなります。これで初めて本当に「営業管理」をしていると実感できたものです。
「耳」からの情報収集には、気をつけなくてはいけない点もあります。1つ目は、ヒアリングは極力その日中におこなうこと。担当者も一晩寝ると、臨場感が薄れて現場の記憶が定かではなくなるものです。当日どうしてもできない場合には、翌日午前中がリミットと考えました。
2つ目は、「減点主義」に陥らないように注意すること。自分の耳で聞いた情報がどんなに悪いものであっても、それを減点材料にするなら、担当者は悪い情報を隠そうとして本当の情報は得られなくなってしまいます。
悪い情報は管理者の責任として受け止め、いかに解決するかに専心することです。逆に良い情報はどんどん「加点主義」で評価し、本人に直接伝えること。それが日報ヒアリングをうまく運ぶ大きなポイントです。
3つ目は、担当者に媚びないこと。嫌われないよう遠慮していては、指導の半分も伝えられなくなってしまい、部下の能力アップやチームの実力向上が実現できません。人間誰しも悪役にはなりたくないものですが、担当者やチームの成長を考え、「褒める時は褒め、叱るときは叱る」をしっかりと実践しなくてはならないのです。
スタイルの確立には1~2か月必要かもしれませんが、慣れてしまえば負担になりません。共通の話題も増えてコミュニケーションも良くなり、担当者の状況が手に取るように分かるようになるでしょう。部下も、いかに上司をうまく使うかを考えるようになります。私の場合もタイムリーな同行訪問が増えて、もう期末に慌てることはありませんでした。
※営業を中心としたお仕事の悩みについて、筆者がお答えします。
大関 暁夫