電気自動車、ハイブリッド車が注目される中、燃費を飛躍的に向上させたガソリン車も頑張っている。2011年上期の乗用車販売台数ランキングでは、ハイブリッド車のプリウス(トヨタ)やフィット(ホンダ)などに続き、「リッター25キロ」(JC08モード基準)のガソリン車、デミオ(マツダ)が5位と健闘している。
軽自動車でも、「リッター30キロ」(同)を掲げるダイハツ・ミライースが、発売2週間で2.5万台受注と好調。先端技術もいいが、既存技術を磨き上げた性能アップの道を選ぶところが、いかにも日本のメーカーらしい。車両価格が安いこともあり、懐の寂しいサラリーマンにも歓迎されているようだ。
週末ショッピング向き、HV車と同水準の燃費
「若者の車離れ」が叫ばれて久しいが、戦後の車バブルが終わっただけという人もいる。女性にモテるため背伸びして買っていた時代が終わり、誰もが必要に応じて身の丈にあった車を買うようになっただけ、というわけだ。
公共交通機関が大都市ほど発達していない地域では、車は生活必需品のひとつであることに変わりはなく、都市部に住む人は買い物やレジャー、家族の送り迎えなど、それぞれのライフスタイルの中で車を使っている。
さらに近年、「環境への配慮」という視点が、車選びの基準に加わることになった。2009年度に導入された「エコカー減税」が後押しとなったうえに、東日本大震災後の省エネルギー意識の高まりも大きく影響している。
中でも、ガソリンを使わない「電気自動車(EV)」、電気とガソリンを併用する「ハイブリッド車(HV)」が話題の中心に。これに押されて「ガソリン車は終わった」という声が聞かれたこともあったが、ここにきて「第3のエコカー」として燃費を飛躍的に高めた低燃費ガソリン車が登場。HV車と同程度の燃費を実現している。
例えば、従来型ガソリン車のラクティス(トヨタ)では、1キロメートル当たりの燃費が6.7円。これに対して、低燃費ガソリン車のデミオが同4.4円。新車販売で一時プリウスを抜いたHV車のフィット(同4.4円)に肩を並べる水準まで来ているわけだ。
充電場所の豊富な都心に住み、子どものお稽古事の送迎に使う程度なら、走行持続距離は短いが燃費のいいEV車が得意とするところ。しかし、郊外に住んで、週末はショッピングモールに行き、旅行や帰省にも使う家族にはHV車とともに、低燃費ガソリン車が選択肢にあがってくる。ガソリン車に慣れた人には、運転のしやすさも魅力だ。
車両価格の安さも魅力、EV車の3分の1ほど
懐の寂しいサラリーマンにとって、燃費のほかに頭痛のタネとなるのが車両価格。EV車の燃費のよさは画期的だが、まだまだ超高級品。車を買うときの「イニシャルコスト(初期費用)」もバカにならない。
標準的なモデルで比較すると、EV車(370万円前後)はHV車(160万円前後)の2倍強、低燃費ガソリン車(130万円前後)の3倍近くする。いくら燃費がよくても、200万円以上の差を埋めるにはいたらない。
2011年8月にマイボイスコムが発表した「エコカーに関するアンケート調査」でも、EV車やHV車に「関心がある」と答えた人は、71.4%と非常に高い割合を示したが、一方で「高くて手が出ない」とした人も74.4%いた。
このほか細かいコストとしては、自動車税がある。排気量1000~1500ccの普通車の年間3万4500円に比べると、軽自動車なら7200円とオトクだ。ただし現時点ではエコカー減税によって、普通車の自動車税は半額の1万7250円にまで下がっている。
EV車にHV車、低燃費ガソリン車の普通車、軽自動車――。日本の自動車産業の技術の粋を集めた競争が、消費者に多くのメリットをもたらしていることを歓迎したい。