人間集団における「2-6-2の法則」 正しい理解と活用法

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   「2-8(ニッパチ)の法則」という言葉があります。「2割の商品(あるいは顧客)が8割の収益は生み出す」状態を表現する「パレートの法則」の別名で、ビジネス書でよく目にする「理論」になっています。同じような考え方として、

「2割の社員が稼ぎの8割を生み出す」
「組織における社員は『2-6-2の法則』に分類される」

という言葉もあります。

   この場合の「2-6-2」は「優秀-標準-不良」という分類になります。ただしこの分類は、状態を表現するのには正しいと思われるのですが、その扱いまで論じたものが少なく、往々にして誤った人材の扱いに使われることが多い気がしてなりません。

「優秀の2」は育成できないと割り切るべき

あわよくば「4-4-2」に変えたいと期待するが
あわよくば「4-4-2」に変えたいと期待するが

   以前から懇意にしている産業機械設計販売の中小企業D社社長と、とあるパーティの席上雑談をしていて、こんなグチを耳にしました。

「うちの営業部隊は、相変わらずダメでね。いまだにほとんど私が営業して稼いでいるんだよ。『2-6-2』で言えば、優秀の2がいない。外部研修とか有料セミナーに参加させているんだけど、ほとんど進歩がないんだ。そのくせ不良の2はしっかりいるんだから参るよね。目下の課題は、『優秀の2』の育成と、『不良の2』の入れ替えだよ」

   この話を聞き、社長は「2-6-2」の使い方を勘違いしているのではないか、と思った私は、後日あらためてオフィスにうかがってアドバイスをしました。

   1つめは、「優秀の2」は生まれ持った「センス」を持つ人材のみが座りうるポジションと割り切った方がよく、育成はなかなか難しいということです。D社においては、まずは社長自身が「優秀」を務めることが早道です。

   自ら起業して人を雇うところまで押し上げられる経営者は、この手のセンスを必ず持っているもの。社長自身が成果を先導し、「標準の6」にノウハウを伝えたり連携したりする役目を果たせばよいのです。

   もしも社長がその役を果たせないのであれば、中途も含めた新規採用に期待するほかありません。外部研修や有料セミナーにかける費用や時間を、「優秀の2」の獲得に振り分けることも考えるべきでしょう。

   2つめは、「標準の6」を無理に「優秀の2」へ仕立て上げようとするのではなく、「優秀」のノウハウを標準化し、それを徹底するアプローチを取るべきだということです。具体的には、訪問件数を増やすための管理強化を図ったり、取りこぼしを減らすために社長営業と連携するスタイルを徹底することなどが考えられます。

「不良」のレッテル貼り放置していないか

   「標準の6」を鍛えて、あわよくば「4-4-2」に変えたいと期待する経営者は世に多いですが、これが変えられないのが「法則」たるゆえん。「標準の6」の人たちには、優秀社員とは別の役割を担ってもらえばよいのです。

   3つめは、社長が「やるべきこと」にあげた「不良の2」の入れ替えの問題です。法則の宿命として、「不良の2」を排除しても、ふたたび新たな「2-6-2」が発生すると言われています。

   であるなら、我慢を決めて「不良」を「標準」に近い「より質の高い不良」に持っていくための努力をすべきです。ここで従ってもらえないようであれば、能力を活かせる別の職場に移ってもらったほうがよいでしょう。

   「不良」のレッテルを貼って、あきらめて見放し、早期退職へ追い込みたくなる経営者や管理者が多いのですが、人員入れ替えのコストや手間がかかる割には、チーム力のレベルアップが実現しない場合が少なくないものです。

   経験からして、基本動作や管理の徹底を粘り強く愚直に繰り返す方が、効果が得られる可能性が高いです。あきらめるのは、ひととおり努力をしてもらってからでも遅くありません。

   なお、先日D社社長に再会したら、この一件の後、社長自身が有効な働きができるように「標準」との連携を強化し、昨今の不況下でも売上を落とさなかったといっていました。次は「不良」の改善に取り組むと張り切っておられましたが、きっとまた効果が出ることでしょう。

※営業を中心としたお仕事の悩みについて、筆者がお答えします。

大関 暁夫

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大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。執筆にあたり若手ビジネスマンを中心に仕事中の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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