トヨタ「内定者の海外留学」に「なぜ採用後じゃないの?」

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   トヨタ自動車が2011年度の内定者を対象に、入社前の「海外留学」を支援する。事務職と技術職の内定者545人から希望者を募り、小論文と語学の試験で最大10人を選抜。米大学の短期留学プログラムを利用し、12年4月から9月まで語学やビジネスを学ばせる。

   留学先の授業料と往復の航空運賃のみ会社が支給。生活費は内定者の自己負担だ。入社日は通常より半年遅れの10月1日付け、配属は12月1日となる。

「入社後の海外研修」は別に行うらしい

米日カウンシルで講演するクリントン国務長官(2011年10月7日)
米日カウンシルで講演するクリントン国務長官(2011年10月7日)

   トヨタは、ねらいを「日本の国際競争力向上のため、グローバルな人材の採用・育成が必要」と説明し、12年以降も継続する予定だという。

   このニュースに対しては、ネット上で「いーな!こーゆーの!」「社員を育てるのも会社の仕事」とうらやむ声が見られる一方で、

「なぜ採用後じゃないの?」
「社員にして派遣すればいいのに」

と首を傾げる人もいる。

   半年間は「トヨタ内定者の留学生」というあいまいな立場となるわけだが、トヨタ広報によると、入社後には別の海外派遣制度が準備されており、今回は学生の立場で留学経験をしてもらうための取り組みだという。

「当社には、米国、欧州からアジア、中近東まで多岐に渡る現地事業体に、入社3年目までの若手を1年間派遣するプログラムがあります。ビジネス慣習を学んだり、外国語によるコミュニケーション力や異文化への適応力を高めたりすることがねらいで、年間100人以上が参加していますが、今回の新制度にかかわらず継続していく予定です」

   東京大学が「秋入学」を導入することが関係しているのかと尋ねたが、「特に影響はなく、入社時期をずらすことが目的ではない」ということだ。しかし、留学生という立場にこだわる強い理由は、いまひとつ分からない。

   どうやら政治的な意味合いもあるということは、トヨタ発表翌日の2011年10月7日のニュースで判明した。クリントン米国務長官がワシントンで行った講演で、「日米関係強化のためにも米国への留学生を増やすべき」と発言したのだ。

「就職活動の早期化・長期化」の罪滅ぼしも

   クリントン氏は、米国への留学生は1997年には日本からが最多だったのに、現在では6位にまで落ちていると指摘。人数もピーク時の4万7千人あまりから、2009年には2万5千人足らずに減っており、

「この流れを反転させるために、私たちはあらゆる方策をとっている」

と述べた。日本自動車界の盟主として、このような国際的な要請を踏まえた行動が求められたのではないか。

   もっとも留学生の減少には、企業側の責任も指摘されている。就職活動の早期化・長期化によって、学生が「交換留学制度」に応募する余裕がなくなっているというのだ。トヨタの取り組みを罪滅ぼしのひとつと考えるのは、うがちすぎだろうか。

   日本経団連は6月14日に「グローバル人材の育成に向けた提言」を発表し、「大学生の海外留学の奨励」を掲げている。具体策として「通年採用の拡大」などによる採用スケジュールの複線化や、帰国生を対象とした「合同就職説明会」の開催を通じて、海外留学した学生を不利に扱わないメッセージを発信することを各企業に求めている。

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