前回に続き、「就職適性検査本」について検証します。今回は、ダメな本を買わないための見分け方ですが、その前に適性検査とほぼ同義で使われている「SPI」について説明します。
SPIとは、Synthetic Personality Inventory(総合的な性格評価)の略称です。1974年にリクルートが開発し、改良を続けながら進化しており、90年代以降の就活でポピュラーとなりました。それ以前に学生だった社会人の方は、「学力筆記試験の進化形」と「職業適性を調べるクレぺリン検査」が融合したものとお考えください。
SPI改訂の内容が反映されているか
企業がSPIを採用する目的は、面接などでは見られない性格・基礎学力を診断するためです。多くの企業では、自前で筆記試験の問題を用意できません。といって何もしないと、基礎学力や性格などが分からないままということになりかねません。
それなら、統一試験であるSPIを、となったのです。現在では「大学入試でいうところのセンター試験のようなもの」と評する専門家もいます。確かにある程度の点数が取れていないと、問答無用で足切りする企業も相当数あると言われるほど。
一方、問題点としては、対策をすればある程度点数が取れてしまうことです。対策でどうにかなるものが就活を左右していいのか、という批判が根強くありますが、代案はないため、結局は頼らざるを得ないのが現状です。
そんな適性検査の対策本に、相当な手抜きがあるという話は、前回させていただきました。それでは、どういう視点でよい本を見分ければよいのか。事情通に聞いたところ、まずは本の中にあるキーワードが手がかりになるそうです。
「SPIは、2002年から改良版であるSPI2に移行しています。したがって、『SPI2』という言葉が入っていない本は、内容的に古く、企業の最新の検査に対応しきれていないおそれがあります」
つけ焼刃的な対策本は使えないおそれも
SPIは1996年に全面改訂が行われた際、受検者への負担を考慮して問題項目を500項目から350項目に削減しました。さらに、その6年後の「SPI2」では全面的な改訂を行っています。では、SPIとはどんなところが違うのでしょうか。
「SPIでは、非言語能力問題で『仕事算』『年齢算』『鶴亀算』などが出題されていましたし、今でも多くの対策本で掲載されています。しかし、SPI2ではほとんど出題されなくなり、代わりに『推論』などかなりひねった問題の出題が多くなりました」
また、SPI2では問題文が長く、読解力を要する試験になっています。適性検査本によっては「違いはあまりない」と簡単にまとめている本がありますが、内容の改訂を行わない手抜きの言い訳のような…。
さらに対策本によっては、問題文の言い回しが実際の試験よりもかなり読みやすく変えられています。これは、なぜなのでしょうか。
「SPI2で実際に出題される問題文のままだと、学生に『難しいな』と思わせてしまう。そこで、簡単な言い回しに変えることで『この本はわかりやすい』と思わせて、売り上げを増やそうとするのです。でも、それでは試験対策になりません。SPI2の対策は短期間では困難です。それを1週間でできるなどとする対策本が多数ありますが、まあ論外ですね」
結局、付け焼刃ではダメということですね。それにしても、学生からすれば代わり映えしない対策本。実は当たり外れがあるとは驚きでした。現状のSPI2に対応できていない手抜き本、もとい自称・対策本の著者と出版社には猛省を促しためにもこう言っておきましょう。「適性検査対策」と言いながら対策できてないとは「非適性」ですよ、と。
石渡嶺司