カリスマトップの交代 後任支える「フォロワー」まで育てよ

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   組織のとってリーダーシップとともに、あるいはそれよりも重要なのが、リーダーを支える人たちの「フォロワーシップ」であると前回説明しました。そんな折、アップル創業者でカリスマ経営者のスティーブ・ジョブズの訃報が飛び込んできました。

   おそらくジョブズ亡き後に、同じようなリーダーシップを取れる人はいないでしょう。彼のように強力なリーダーシップを発揮したトップが交代する場合、組織の動揺はかなり大きくなります。それは後任のフォロワーを含めた育成が済んでいない場合が多いからです。

「讃えられるのは自分だけでいい」では厄介

冷静で温厚そうなティム・クック率いる現在のアップル重役陣(アップルのウェブサイトより)
冷静で温厚そうなティム・クック率いる現在のアップル重役陣(アップルのウェブサイトより)

   知人が勤務するネット系の企業は、人気経営者が率いる企業として「優秀な人材の宝庫」と言われています。しかし、会社OBに話を聞くと、こんなことを言っていました。

「優秀な人材が集まるからこそ、凄まじい軋轢が発生します。社内政治の苛烈さは想像を絶するものです。お互いに手柄の取り合いや、ミスのなすりつけ合いで本当に疲弊してしまいます」

   社長もちょっとしたミスだけでなく、気に食わない会話の端々を捉えて、左遷したり降格させたり。実質的なクビ宣言のようなもの。

   部下たちも競争を勝ち抜くために、他人の揚げ足を取る一方で、自分は何があっても言い訳ができるシミュレーションを重ねる。それでも数多くの優秀な人材が、使い捨てのように職場を離れていくと嘆いていました。

   こうした状況をカリスマトップは把握していても、取るに足らないこととし、相変わらず傍若無人の振る舞いをやめない場合が多いように思われます。もしかすると、強い自己顕示欲のあまり、

「自分は天才だ。讃えられるのは自分だけで十分なのだ」

と本気で思い込んでいるのかもしれません。

「後任の育成」だけでは成功は保証されない

   人事の仕事を長年していると、一定の成功を収めた企業の「トップの交代」には、いつも似たような問題にぶち当たる気がしてなりません。それは、次のトップを支えるフォロワーシップがしっかりできていないことが多い、ということです。

   たとえば、多くの業績をあげて人気も高かったある首相のもとで、非常に評価の高かった官房長官が次の首相になったとき、思ったほど成果をあげられないまま不幸なことに短期間で退任したことがありました。

   もちろん、本人の力量の問題もあったのでしょうが、自分ほど有能な官房長官を後任に置けなかったことなどを含め、フォロワーシップとしての内閣官房の機能がうまく働かなかったことも原因だったのではないでしょうか。

   トップの交代は、大きなインパクトをもたらします。ただ、それと同等なくらいにフォロワーの存在が大事なのです。カリスマによって率いられてきた組織が、トップの交代を機に封じ込めてきた軋轢を一気に露見させることもあります。

   「あの人がいたから我慢してきたけど、これからは言わせてもらうよ」と、幹部クラスが好き勝手な自己主張を始めて統率がとれなくなり、内部崩壊した企業はたくさんあります。

   カリスマトップがリタイアするときには、後任のトップだけでなく、彼を支えるフォロワーまで含めて育てることが大事。少なくとも引き継ぎのときには、そういう体制がとれているかどうか配慮してあげる必要があるのではないでしょうか。

高城幸司

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高城幸司(たかぎ・こうじ)
1964年生まれ。リクルートに入社し、通信・ネット関連の営業で6年間トップセールス賞を受賞。その後、日本初の独立起業専門誌「アントレ」を創刊、編集長を務める。2005年に「マネジメント強化を支援する企業」セレブレインの代表取締役社長に就任。近著に『ダメ部下を再生させる上司の技術』(マガジンハウス)、『稼げる人、稼げない人』(PHP新書)。
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