モバイルが直面する「電気と電池の10年代」

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   ヨーロッパへの海外出張の折、現地社員が持っていたiPhoneの「カッコよさに一目惚れした」30代の会社員Aさん。帰国後、さっそくケータイから買い換えました。

   アプリや暇つぶしのためのゲームも一通り揃え、ちょっといい気分に浸っていたそうです。「まあ、電池が保たないのはわかっていたので、気をつけていたんですけど…」

3次会の最中にバッテリー切れ

   懇意の得意先の担当者と、飲みに行った日のこと。2次会、3次会と流れるうち、案の定、電池が切れてしまいました。

「調子に乗って、飲み屋やらグルメサイトやらを検索していたんですよ。飲んでる最中に、自慢したくて用もないのにネットにつないでましたし(笑)」

   夜中の2時を過ぎて帰宅したAさん。「そうだ」と思い出して充電し、シャワーを浴びて戻ると、メール巡回アプリが着信を示していました。

「一緒に飲んでいた担当者からの御礼かなんかかと思ったんです。ところが読んでみると、これが別の得意先からの連絡で…」

   Aさんは一気に顔が青ざめ、酔いが吹っ飛んだと言います。

   内容をよく読むと、明日に返事をすれば構わないものでした。ひと安心とはいえ、受信の連絡を今から送るわけにもいかず、どうしたものかと思いつつ何気なくヘッダを見て、あることに気づきました。

「相手からの送信時間が、午前の10時過ぎになっていたんです。その日は午後からしか外出がなかったので、昼までは会社にいて、iPhoneはデスクの上に置いていたんですけど、メールの着信は確かになかったんですよ」

   飲みに出て電池が切れたと気づいたのが、21時から22時頃にかけて。考えられるのは、メールが遅配したということです。

簡易充電器2つとケーブル常備

「メールの遅配は、回線の混雑などであり得ることと聞いていたので、多少腹が立ったけど、まあそんなものかと思いました。それよりも、うっかり電池が切れて急ぎの連絡を知らずにいたらと、そっちの方が気になっちゃって…」

   以来、簡易充電器を2つ、必ずカバンに入れて持つようになったAさん。「USBコネクタがついている充電用のケーブルも持ち歩いてます」というからには、よほど気になっているのでしょう。

「ご存知のとおり、仕事の連絡はもはやメールが多い。スマートフォンは便利でいいんですけど、なんか毎日が電池、電気にしばられているようで、妙な心持ちですね」

   そういえば、震災による発電所の事故で、今夏はオフィスでも電気で難儀することが多くありました。まさに「電池と電気の10年代」、そうぼやきたくもなりますね。

井上トシユキ

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井上トシユキ
1964年、京都市出身。同志社大学文学部卒業(1989)。会社員を経て、1998年よりジャーナリスト、ライター。東海テレビ「ぴーかんテレビ」金曜日コメンテーター。著書は「カネと野望のインターネット10年史 IT革命の裏を紐解く」(扶桑社新書)、「2ちゃんねる宣言 挑発するメディア」(文藝春秋)など。
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