2人の広告代理店の営業マンと話した、先週の続きです。仕事の連絡は100%近くがメールになっているため、スマートフォンが手放せない。そんな近況について聞いていました。
そこへ遅れてやってきたのが、Aさんの上司である40代のCさん。実はBさんとも前職で上司と部下の関係で、Bさんが東京に出てくる時には必ず3人で会うのだとか。
そのCさんも2人に負けず劣らずスマホを使っていますが、最近少し気になることが出てきたそうです。
会社の中でマンガを読むようなものか
「スマートフォンに縛られすぎ、と言いますかね。意識がスマートフォンにしかいっていない感じなんですよね、見ていると」
たとえば、こんなことがあった、とCさん。ある大きな会社の受付ホールで別の部下と待ち合わせていたら、先に到着していた彼が椅子に座ってスマホを操作していました。
仕事メールのチェックをしながら、スマホに入れた音楽をイヤホンで聴いていて、Cさんが近寄ってもまったく気づきません。
「私に対しては、別に構わないんです。ところが、その時は偶然、駅で一緒になった先方の担当者も一緒だったんですね。これはいくらなんでも失礼だし、この程度の社員がいる会社なんだと思われるでしょう?怒鳴るわけにもいきませんから軽く叱ったんですが、冷や汗ものでしたよ」
Cさんにすれば、いくら待ち合わせとはいえ、「仕事先で音楽を聴きながらスマートフォンを操作するなど言語道断」なのだそうです。
「マナーでいえば、相手の会社の中でマンガ雑誌を読むようなものでしょう。そんなのあり得ませんよ」
とはいえ、Aさんら若手にも言い分はあります。営業関連のメールチェックはもちろん、仕事に関する調べものをしていたり、前回のミーティング内容のメモを確認していたり…。決してマンガを読むようにサボっているわけではない、と。
集中力も大事だが周囲への注意力も必要
しかしCさんは納得しません。
「そりゃあ、そうした事情は知らないわけじゃない。すきま時間に外部のノイズを遮断して、リラックスしながらスマートフォンで仕事をするスタイルも分からないわけでは決してないんだけど、集中力だけあっても周囲への注意力がなければ、社会人として成長しないと思うんですよね。
特に我々のような仕事は、世の中の動きに人一倍、敏感じゃないといけない。世の中の動きは、スマートフォンだけに頼っていてはわからないよ。歩いている人の様子や街の変わり様なんかに対して、普段からアンテナを張って注意していなきゃダメだと思うんです」
集中力も注意力も求められる仕事をしている営業マンが、上司はもとより先方の担当者が来ていることに気づかないようでは、良い仕事ができるはずもない。スマートフォンを使いこなすのは良いことだが、没入しきったり、頼りすぎるのでは本末転倒だ。
Cさんは、訥々と話しました。
AさんもBさんも、いまひとつ納得しかねる部分があるようですが、総論としての反論はありません。
前回はAさんらにたしなめられましたが、ずっとスマホを睨みつけるように歩いていたり、店で食事をしながら片手で操作している人が増えているのは事実。
そして、たいてい没入しているので周囲に気がいかず、他人の邪魔になるなど気の利かない状態になっているケースも珍しくありません。
何事も切り替えと、ほどほどということですかね。私がそう挟むと、Cさんが「今日のお酒もほどほどにしておきましょうね」と引き取り、話題を変えました。
井上トシユキ