「仕事の連絡は、100%近くがメールですからね。スマホは手放せません」
そう話すのは、都内の広告代理店で働く30代の営業マンA氏。傍らにいた、北関東でやはり広告代理店に勤めるB氏も相づちを打ち、続けました。
「通話専用のガラケーも持ってますけど、ほぼ実家との連絡用みたいになってますね。彼女との連絡もメールですし、行きつけの飲み屋だってママとはメールでやり取りした方が早いし、確実なぐらい」
恐怖心からスマホ手放せない営業マン
そういった事情から、メールの新着確認アプリは必須だそうです。ところが、これで困るのが電池なのだとか。
「定期的に起動するアプリを動かしていると、すぐに電池がなくなっちゃう。だから、充電器や電池はカバンのなかに放り込みっぱなし、特に電池はいつも補充して歩いてますよ」
そうA氏が言えば、B氏も「カバンのなかがゴチャゴチャしちゃうし、重くなるけどしょうがないですね、こればっかりは」。
それよりも、とB氏が続けたのは、メールでの連絡についてです。
「ここ最近、メールを送ったら、相手は必ず読んでるものみたいになってるんですよね。たまに電話がかかってきたと思ったら、『メールの件、なんで返事してこないんだ!』って怒られたり。打ち合わせが長引いて、終わってスマホを見たら新着メールが50件とか来てて、その大半が『先ほど送ったメールの返信はまだでしょうか?』だったり…」
A氏が引き取って話しました。
「営業マンってバリバリ街中を歩き回るってイメージでしょうけど、実際にはスマホやタブレットPCに向かってカチカチ静かにメールを打ってるってケースも、決して少なくないんですよ。下手したら一日中、メールに追い回されてる感じ」
10年ほど前、ネットが急速に普及しはじめた頃には「メールを送ったので読んでおいてくださいと電話する、なんてムダなことをやる人がいる」という笑い話がありました。
しかし2人の話を聞いていると、メールを送って確認の電話をするという「ムダな動作」がビジネスマナーとなりかねない。そんな雰囲気さえ感じます。
「車内や店内、歩いている時にまでスマホを片手にしている連中、って井上さんバカにした感じで言うけど、彼らは仕事のメールに追い回される恐怖から、常に見ていないと不安で仕方ないサラリーマンなのかもしれないですよ。いや、ホントに気疲れしちゃうことがあるんですから…」
A氏はそうつぶやくと、スマホをチラリと見やりました。
井上トシユキ