朝日新聞の2011年8月22日付け夕刊に掲載された「科学的根拠ないのに…シューカツで企業が血液型質問」という記事が、ネット上で話題になっている。
記事では採用面接で血液型を聞かれ、B型と正直に答えて落ちた中部地方の女子学生と、「君はA型ですか」と聞かれ、まじめな性格と言いたいのだろうと解釈した男子大学院生が「はい」と答えた例を紹介している。
AB型集めたチームもあった20年前
彼らの合否に血液型が影響したかどうかは不明だし、「A型はまじめ」というのも男子学生の解釈に過ぎない。しかしあるサービス業の採用担当者が、
「入社後に細かい作業をする部署もあるので、配置を考える上でも血液型を把握しておきたい」
とコメントしているのを読むと、企業側が何かの判断に使っているのではと疑心暗鬼になる。
性格と血液型に関係があるという科学的な根拠はなく、「自分の努力で変えられないことを就職の面接で聞くのはおかしい」(菊池誠・大阪大教授)という批判もある。
愛知県の「『差別のない採用選考』の手引き」には、面接時の「血液型の質問」が問題事例としてあげられている。会社は「工場の事故等緊急時の輸血に必要」と主張したが、採用後に確認すればよいとして行政指導が行われたそうだ。
ネット上にも、面接の場で血液型を話題にする会社があることに、
「こんなバカなこと訊いてくる会社には入らん方がいいだろw」
「頭の不自由な企業は消滅する運命だから就職しなくて正解」
などと批判的な声があがっている。流血が絶えない職場なのかも、と揶揄するコメントもあった。
単なる世間話だから神経質になる必要はないという人もいるが、20年前には本気で血液型診断を信じていた人もいたようだ。1990年11月21日付けの朝日新聞は「AB型社員でチーム」という見出しで、ある電機メーカーの取り組みを紹介している。
斬新な商品開発アイデアの不足に悩む事業部が、「アイデア、企画力に優れたAB型」の社員を5人集めてプロジェクトチームを作って合宿を行ったところ、奇抜だが有望なアイデアがいくつも出たという。
「性格は血液型より人を見ろ」
どうやら70年代から80年代には、「血液型を組織マネジメントに生かそう」という動きがあったらしい。都内の部品メーカーに勤める50代半ばのAさんは、当時をこう振り返る。
「社内のプロジェクトチームで、メンバーのまとまりが悪くて成果が出ないことが続き、成功率を上げるメンバー選定が大事という話になったのが、検討のきっかけかな」
ある重役が血液型によるメンバー構成を提案し、本を読んだり、社員をグルーピングして法則を導き出したりして参考にしたという。
「同じ血液型で揃えるよりも、チームが有機的に動く組み合わせが大事だとか、同じA型でもAOとAAは違うよねとか、そういう議論も出ましたけど定着はしなかった」
メンバー構成の重要性は共有できたものの、人間を血液型だけで判断しようとすると、かえって効率が悪いということになったらしい。「性格は血液型より、まず人をよく見ろってことですよね」