「増税タブー」から「増税しないタブー」へ

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   消費税の引き上げを巡る議論が活発化している。与党民主党に加えて、野党である自民党も消費税の引き上げには前向きだ。

   この分だと2010年代には、10%台半ばくらいには引き上げられるだろう。国債という形で先送りされるよりは、きっちり増税してもらった方が若年層にとってもメリットは大きいので、この流れ自体は喜ぶべきことだ。

消費税増税でトクをする人たち

   ところで、つい最近まで日本では増税はタブーだとされてきた。あの小泉政権でさえ、財政再建の重要性は認めつつも、増税は先送りし続けたものだ。

   小泉政権とは比較にならないほど有権者から支持されていない菅政権や谷垣自民党が、積極的に増税を公言し始めた理由とは何だろう。増税によって誰がトクをするかを考えると、意外な事実が見えてくる。

・高齢者
   全国紙による世論調査で増税容認派が過半数を超えるようになったのは、財政危機の到来により、社会保障をカットされることを予想し始めた高齢者が、増税容認に転向しつつあるからだ。
   特に、無事に現役時代を逃げ切った団塊世代は、自分たちの社会保障の受け取りを確実なものとするために、これからは積極的に増税を支持するだろう。
・連合
   自営業者やフリーターは公的年金が破たんしても大して困らないが、年収の15%以上も厚生年金に出資し続けている正社員は大損することになる。
   また、企業に負担させても、結局は自分たち従業員の賃金に跳ね返ってくることをよくわかっているので、消費税による幅広い負担が連合にとっても合理的だ。

   高齢者と連合という二大票田が喜ぶ政策を、政治家がやらないわけがない。これが、自民、民主という二大ミーハー政党から、そろって消費税引き上げという話が出るようになった背景である。

本当の戦いは「増税vs社会保障カット」

   もはや日本において、増税はタブーではなく、増税しないことがタブーとなったわけだ。高齢者は消費税より所得税の引き上げを望むだろうから、実際には所得税→消費税の順に引き上げがなされることになるはずだ。

   従来は赤字国債による先送りや、「大企業が悪い」的な低レベルの議論で誤魔化されてきたが、これからは、どれだけの社会保障を維持するために、誰がどれだけ負担するかというガチンコの議論が行われるだろう。

   「経済成長すれば増税する必要はない」という説も、生産年齢人口の減少と年1兆円の社会保障費アップが続く中で説得力を失った。いよいよこれから、大きな政府、小さな政府の議論がスタートするわけだ。

   個人的に、大きな政府か小さな政府のどちらがいいかを、あれこれ言う気はない(そのための負担が世代間で公平になされていればいい)。

   ただ、これから多くを担う若手は、「こうすればタダ飯が食えますよ」的な与太話に騙されることなく、自身の信念に基づいて増税論議に参加して欲しいというのが願いである。

城 繁幸

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人事コンサルティング「Joe's Labo」代表。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種経済誌やメディアで発信し続けている。06年に出版した『若者はなぜ3年で辞めるのか?』は2、30代ビジネスパーソンの強い支持を受け、40万部を超えるベストセラーに。08年発売の続編『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』も15万部を越えるヒット。ブログ:Joe's Labo
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