買い物帰りの道すがら、何気なくケータイショップに目をやった50代の主婦A子さん。店頭に置かれた大型のPOPを見て、我が目を疑いました。
「ご存じですか?来年7月で一部のケータイが使えなくなります――。そう書いてあったんです。もし自分のケータイが使えなくなったら困ることになる。そう思って説明をしてもらおうと、自分が使っている通信会社のショップを探したんです」
まだ1年あるのにお父さんスマホに機種変更
A子さんにとって通信会社のショップは、通り過ぎる風景の一コマ。意識して店頭を探すのは初めてでした。「私が説明を受けてもわからない」という理由から、機種変更などは、息子や娘に委任状を託してやってもらっていたのです。
「ああいう、銀行の窓口みたいな雰囲気になっているのも、初めて知りました。それで、説明したもらったら、平成24年の7月24日から一部の周波数帯を使っているケータイが利用できなくなる、と」
A子さんが使っている機種は、去年機種変更したばかりだったので、継続して利用できることがわかりました。
「社会人の娘以外は、パパの家族割引でケータイを買っているので、念のために使えなくなる機種の一覧表をもらって帰ったんです」
すでにスマートフォンに切り替えていた息子さんもOK。問題はご主人でした。そこで、帰宅してきたご主人に尋ねてみました。
「そしたら、通信会社の通知は会社宛に来るもんじゃないだろう、お前が知らなきゃ俺は知らん、って。調べてみたら案の定、これが該当機種でした」
次の休みの日、A子さんはご主人を連れて、再びケータイショップに赴きました。期限にはまだ1年ありますが、機種変更が無料でできるなら、部下が使っていた「パタンとする二つ折りじゃなくて、スライドするやつ」に変えたいと、ご主人が言い出したことがきっかけです。
ところが、A子さんが委任状を使っていたことを知るや、「お前が行っといてくれ」と急に面倒くさがってしまいました。
「愚図る夫を引っ張っていったのはいいけど、それからが大変。あんなに面倒がっていたのに、順番を待つ間に急に最新のスマートフォンに興味を示して、1時間近くも使い方の説明を受け、いざ買う段になったらあれこれと悩み、料金プランの説明がわからずに何度も質問し…。ほとんどこれだけで1日がすっ飛んじゃった」
家に買ってからも、帰宅してきた息子さんをつかまえてアプリについて教えてもらい、パソコンで自分の機種のユーザー評価を検索したり、使い方が書いてあるサイトをいつまでも眺めたり。
「男の人って、あたらしいオモチャに夢中になりやすいんですかねぇ。安くはない買い物ですし、飽きないかといまから心配ですよ(笑)」
井上トシユキ